148、団長は思考を巡らせて ページ28
【クロロ side】
俺が問いかけた瞬間にソフィアは、不安、怯え、疑問。幾つもの感情がない交ぜになった目をしていた。
淡々とした口調で正解であると告げ、そのあとは黙々と食事を口に運ぶと俺たちの前から逃げるように通路に向かっていった。
気配はあるから追ったりはしないが。
「怯えるほどの何かがあるのか……?」
「迫害でもされたんじゃないか? 緋の目ん時も悪魔の目だっつって噂になってた町あったろ」
「それにしてはちょっとあの子の目とかあの子自身に関して情報がなさすぎるんだよね。クルタ族の時もなかったけどさ、そういった話はちらほらネットに流れてたよ」
知られることに不安を感じ、怯える。それほどまでに特異な能力を持っているのか。
手元に置いておきたいと思うが、怯えられていたら話にならないからな。受け入れる姿勢で接してやればいつかは心も許すだろう──
「団長、やめときな」
思考を中断して、制止の声をかけたマチに目を向ける。俺は声に出してはいなかったはずだが。
「勘か」
「勘だよ。やめときな。多分それ逆効果だから」
「……そうか」
確かに世の中には同情されることを嫌う者もいる。かくいう俺たち旅団もその部類だ。あれも同じならば逆効果だろう。
しかし、勘が働いたからといってマチが止めるのは珍しい。
「お前も気に入ったか」
「別にそんなんじゃない。ただ……」
「ただ?」
「あれはアタシらと違うとこにいる人間だけど、バカみたいにアタシらを真っ直ぐ見てる。何より、本質が近いとこにある。そんな気がするだけ」
アタシも部屋に戻るから、と言ってマチが通路に足を向ける。
(本質が近い、か)
本質というものの定義は各々違いがあり哲学的な要素が強い。
”それがそれであるために必要最低限の要素”、”物事で一番価値のある部分”、”表面的でない性質”という意味を持つ。
マチの場合近いところにあると感じたのは表面的でない性質の部分だろうが。
「そもそも性質とはもって生まれた気質のことを指す。つまり本質の部分で近いというのはもって生まれた気質が近いということであり、その場合」
「だーーーそういうのは部屋でやってくれ団長! 酒が不味くなる!!」
「む……すまん」
ノブナガの訴えに謝罪し、瓦礫から腰をあげて俺も部屋に戻ることにする。ソフィアの気配は何故か俺の部屋にあって、思わず笑みを溢してしまった。
先程の様子からしてまさか普通に部屋にいるとは思わないだろう?
170人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「HUNTER×HUNTER」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:クロ | 作成日時:2019年6月1日 15時