日常、3分前。 ページ10
貴「あと3分……」
腕に巻きついた、ちょいとごつめの時計のディスプレイを覗き込み、私は呟いた。
薫「まったく、ご子息も凝ったことをなさる。Aも忙しくなってるなぁ」
能天気にコーヒーを啜りながら英字新聞を広げる父さん…!
貴「誰のせいだ誰の…! ……つか父さん、それ日本のカフェでやったらドン引かれるよ」
贔屓目抜いても似合ってるのがまた腹立つわ。
そう、この時計、時計型通信機。まだ、開始の合図がない。というのも、通信機君が残り2分15秒を表示してるから。
凝ってるよな跡部、ほんっとに。
薫「…Aも変わったな……」
貴「なにが?」
ふと見ると、コーヒーを置いて、英字新聞の向こう側、切れ長の目がじっとこっちを見ていてちょっと怯む。いつもの、穏やかで優しい目と違ってなんだか…鋭い。
薫「……いや」
ふ、と、それが緩んで、私の変な緊張も解けた。
薫「……面倒ごとを完璧に避けてたのに、今は…こういった、わいわい騒げる場所にいる」
貴「ああ。来るつもりはなかった。というか完全に成り行き、兼無理矢理」
すっぱり言うと苦笑いを喰らいました。ま、そりゃそうよね。
でも、立海の面々の顔が、ついで、青学、四天宝寺、氷帝…。
貴「でも、あいつらといるのは楽しいし、騒ぐのも楽しいし」
………お?
貴「今まで避けてたこともたくさん、濃縮して味わってる気がするし」
……あれ?
貴「今は、あいつらと一緒にいることが落ち着くし、というか当たり前になってるし」
…うん?
貴「つか、なんかもう今は考えられないしね、このわいわいがやがやがなくなるのって」
ちょっと待って。
貴「すごく楽しいよ。今、私」
国語の教師が悲鳴をあげそうなくらいのめちゃくちゃな文章、でも。
薫「…そうか。ちょっと見ないうちに……成長したんだな」
とても感慨深そうに、私を見る父さん。
貴「あ」
ふと気付く。残り、5秒。
4、3、2、
貴「1」
START。
合図のアラームが鳴り響く。
薫「行って来い。頑張れよ、A」
笑って、私の名前を呼ぶ父さん。
私も笑い返して、
貴「行ってくる。絶対全員見つける。…絶対勝つ」
そういって駆け出した。背後で、
薫「勝気な顔もシホそっくりになったな…」
そんな言葉が聞こえた。
その時何故か、自分がさっき父さんに言った言葉がリピートされて、
貴「……私、さっき、なに言った…!?」
我に返って顔が火を噴いたのを見たのは、廊下の壁を飾る油彩画の貴婦人だけだった…はず。
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椿(プロフ) - NANOMANOさん» ありがとうございます!!! 私も、ツンデレコンビのデレは大好きです。財前君もっとデレろ…! (2014年11月6日 21時) (レス) id: f85a5f48fd (このIDを非表示/違反報告)
NANOMANO(プロフ) - 財前が可愛いです。ものっそい可愛いです。デレをありがとうございます。いつでも応援します!ファイト! (2014年11月6日 3時) (レス) id: f5d752c2cb (このIDを非表示/違反報告)
椿(プロフ) - キー子さん» ありがとうございました!! 続きは…うん、これ以上のカメですが、お付き合い頂ければ幸いです。 (2014年11月1日 22時) (レス) id: f85a5f48fd (このIDを非表示/違反報告)
椿(プロフ) - 七夕♪さん» 光栄です! こんなカメ足にお付き合い頂き、ありがとうございました! (2014年11月1日 22時) (レス) id: f85a5f48fd (このIDを非表示/違反報告)
キー子(プロフ) - お疲れ様です!日常にスポットを当てていて親近感がわくお話でした(^ν^)続編があるのならば是非また応援します!絶対!! (2014年11月1日 22時) (レス) id: 9a1f8b418f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:椿 | 作成日時:2014年6月8日 19時