【刀剣乱舞】私はあんな姉のコピーじゃないので新しい本丸で暮らします。

機嫌が悪い主　〜長谷部side〜 ページ38

新しい主が俺を近侍にしてくださった。



大げさかもしれないが、夢かと思った。



なぜなら、俺は前任が来てからというもの、主命と言える主命を受けてこなかったからである。



今回の主も前任と同じなのかと疑ってしまったが、そうではなかった。



月に一度行われる審神者定例会の近侍を頼まれた。



勿論主の主命を断る理由はどこにもないので引き受けた。



『長谷部、これから長くなるけど、疲れたりしたら外で待ってて良いからね？』



会場では、わざわざ俺の心配までしてくれた。



たかが刀剣の俺に優しく接してくれる主は、気配りのできる優しいお方だ。



それから定例会の最中は、主の側を離れなかった。



定例会終了後、主は今日の定例会の司会をしていた新米役人に何か話しかけに行っていた。



『……あぁっ！ もうっ！』



しばらくして、主は手に持っていた資料を机に叩き付けた。



「主、一度席について落ち着いてください」



『あ、あぁ、ごめん、そうするよ』



機嫌の悪い主は初めて見たので、とりあえず近くの椅子に座らせる。



『ねぇ、長谷部』



額に当てている指の隙間から見える主の虚ろな瞳。



「何ですか？」



『もし私が幼少期からとある人物に対してドス黒い抱いていたとしても、長谷部はそんな私を受け入れてくれる？』



主の手は微かに震えていた。



このお方は怯えているんだ。きっと、俺が知らなくて主が知っている何かに。



「勿論です。俺は、この身が滅びるまで主に忠誠を誓っていますから。俺だけではありません。貴女に忠誠を誓う者は皆、どんな主も受け入れる覚悟はできています」



俺はどんな主でも受け入れる。主がお守りを下さったあの日に、そう心に誓ったんだ。



『……それなら良かった。安心したよ』



主、辛い時は俺たちに話してくださいね。

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