蜃気楼*23 ページ23
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朝陽が昇りきって、周囲が明るくなってきた頃、
ひろがまたぐずぐずと泣き始めた。
考えてみたら、こうやって抱きしめてやるのも久しぶりかもしれない、不安にさせてたかも。
「もー、なにそんなぐずって…」
俺の言葉には答えず、すりっと俺の肩に額を押しつけた。
「…また太輔がしんじゃったらどうしよう」
「……今日1日は、不安だからここにいようか」
ひろは俺の言葉に小さく、うん、と返事をした。
9月でまだ暑くても、元々人の少ない海で、平日ということもあって、
昼前になっても人はまばらだった。
ぐーーきゅるるる……
「…ぅ」
「はは、おなか空いた?なにか買いに行こうか」
ひろのおなかが空腹を訴えてきたから、立ち上がろうとひろを抱き上げようとすると、ひろがぎゅっと俺の服をつかんだ。
「…向かいの、コンビニに行くの?」
「…大丈夫だよ、一緒に、行こう?」
「……うん」
コンビニはすぐそこだけど、そのコンビニとの間には車道が走っている。
ひろはそれを恐れたんだろう。
ぽんぽん、と背中を優しく叩いてやればゆっくりと立ち上がった。
砂浜を離れるとひろの手がぎゅっと俺の手を握りしめた。
横断歩道があって、青信号なのに、これでもか、というほどふたりで左右を確認し、向かいに渡る。
もちろんそれだけちゃんと確認したし、車なんて突っ込んでくるはずもなく。
慎重になりすぎてるのがあまりにおかしくてふたりでコンビニの前で笑ってしまった。
1日分の食事をわさわさと買い込んで、再び砂浜に戻る。大人の男ふたりで、おにぎりやらパンやら飲み物やら、やたら買い込んだので、店員に変な顔をされた。
暑いからってふたりで買ったアイスを、ひろは美味しそうに食べていた。
アイス食べながら、それでも必死に、めちゃくちゃ左右確認するひろがすごくかわいい、なんて言ったら、殴られるかな、笑
砂浜に再び座り、残りのアイスを食べながらぼんやりと海を眺める。
幸いほどよく雲がかかって日差しはあまり強くなくて、砂浜で一日すごしても大丈夫そうな気温でもあった。
ひろはすっかり安心したのか、コンビニの袋の中からおにぎりを取り出してもぐもぐと口いっぱいに頬張っていた。
「太輔も、ちゃんと食えよ」
「わかってるって」
ひろが美味しそうに食べる様子を眺めていたら俺もやっと自分の空腹に気がついて、買ってきたサンドイッチを口にした。
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しょこら(プロフ) - Hina.Tamaさん» Hina.Tama様、お読みいただきありがとうございました!!そう言っていただけて嬉しいです。。゚(゚´ω`゚)゚。 (2018年7月27日 0時) (レス) id: ef72d80421 (このIDを非表示/違反報告)
Hina.Tama(プロフ) - しょこらさん初めまして。本編完結おめでとうございます!ハラハラドキドキな展開に毎日更新を楽しみにしていました。素敵なお話本当にありがとうございました!! (2018年7月27日 0時) (レス) id: ca7c7000b2 (このIDを非表示/違反報告)
しょこら(プロフ) - 日美さん» 日美様、ありがとうございます!そのように言っていただけて本当に嬉しいです。゚(゚´ω`゚)゚。 (2018年7月27日 0時) (レス) id: ef72d80421 (このIDを非表示/違反報告)
日美(プロフ) - 初コメ失礼します。更新お疲れさまでした。初めて更新されたときから毎回更新がとても楽しみな作品でした。とても大好きなお話です!また次のお話も楽しみにしています……!! (2018年7月26日 23時) (レス) id: 86fe79ef6e (このIDを非表示/違反報告)
しょこら(プロフ) - askiiii...xxxさん» ありがとうございます!更新頑張りますのでよろしくお願いします!⊂*`∀´⊃ (2018年7月18日 10時) (レス) id: ef72d80421 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しょこら | 作成日時:2018年7月13日 12時