夢現*8 ページ8
*
「でも、強いて言うなら、今の太輔とがよかった」
「俺は、若いひろもかわいいけどね」
「そういうことじゃないっ」
「はは、わかってるよ」
ふと携帯に視線を落とすと、もう20時を過ぎていた。
「もうこんな時間だ、飯でも食って帰……」
驚いた。
俺が今、たった一瞬だけ目を離した隙に?
どうなってるんだ
「え、ふじがや……」
「元に、戻ってる……」
朝のようにぺたぺたとひろの頬に触れる。
間違いなく、ほんもの。
「誰が、叶えてくれてるんだろうな」
「わ、かんないけど……」
「とりあえず、飯いこうよ、俺腹減った」
「う、うん……」
ひろが肉食べたいって言うから、焼肉屋に入った。
店に入っても、相変わらず店員さん以外には俺たちの姿は見えないらしかった。
とりあえず端の方のできるだけ人目につかない席をお願いして、空いていたので使わせてもらうことにした。
「じゃあ、乾杯」
お酒が入れば、俺のよく知る今のひろは、
嬉しそうに今日はこれが楽しかった、あれが楽しかった、と話し始めた。
「楽しかったから、すげーたくさん服買っちゃったじゃん」
「え、俺のせいかよ」
「だって、楽しかったから!」
んはは、と機嫌よさげにひろは笑う。
そんなひろにつられて自然と頬がゆるむ。
*
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作者名:しょこら | 作成日時:2018年7月10日 0時