黒いマントと赤いリボン*3 ページ3
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「……行ってくるよ、宏光」
宏光からもらった石に触れ、話しかけ、口付けた。
今日の行き先は街だ。
いつも街で買いだめしている小麦粉と砂糖がなくなったので、母親の代わりに買いに行く。
"……宏光、愛してる、…一緒に生きよう"
あの日、気づけば森の入口に倒れていた。
宏光にあの言葉を伝えてからの記憶が何もない。
空のはずのカゴはベリーでいっぱいだった。
あの日以来半年が経つが、俺は森に足を踏み入れられなくなった。
森に入ろうとすれば、森の入口から先、足が動かなくなってしまう。
きっと宏光の魔法にでもかかっているのだろう。
…もう、来るなということか
悔しいけど、これも運命(さだめ)かと、宏光に会う手段を絶たれてしまった俺は、そう思うしかなかった。
村の入口にある村で最も大きい広場に出ると、なにやら人が集まっていた。
「魔法使いが捕まったって」
「どう処刑するんだろうか」
どくり、と心臓が震えた。
まさか、いや、でもあいつは、どこかどん臭くて、
「この魔法使いをいかに処刑しようか!」
街から来たのであろう、偉そうにひげを伸ばした役人が何やら大声で言っている。
隣には柱に括りつけられている魔法使い。
茶色がかったふわふわとしたくせ毛…宏光だ。
「火あぶりだ!」
「川に沈めてしまえ!」
様々な声が上がる中を、抜けていく。
「…お言葉ですが」
宏光が俺の声にバッと顔を上げた。
一度だけ目を合わせ、再び役人の目を見る。
「その魔法使いの処刑、私にお任せいただけませんか」
今日の行き先が街でよかった、小綺麗な格好をしているから、有識者にも見えないこともないだろう。
「…ほう。この魔法使いをどう処刑する。火あぶりか?」
すう、と息を吸った。
宏光が魔法使いとわかってからの半年、魔法使いについてこっそり勉強していた。
「火あぶりにすれば、呪いの煙が村を覆うだろう。石に括りつけて川に沈めれば、川は氾濫し、水は黒くなり作物は枯れ果てるだろう。」
"言い伝え"にすぎない魔法使いの処刑結果を次々と並べる。
「…ならばどうする」
「私が身をもって、その魔法使いを追放しよう。遥か遠くへと」
「…いいだろう」
役人は鼻で笑うと、手首を縛られたままの宏光が引き渡された。
「逃げよう。遥か遠くへ」
宏光はぎゅっと下唇を噛んだ。
涙がこぼれていた。
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作者名:しょこら | 作成日時:2018年8月20日 12時