涙雨 (ページ2)

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その日は朝から雨が降っていた。

それもそうか、今日から梅雨入りだって朝のニュースで言ってたっけ。

でも降ってるのか降ってないのか分からないぐらい少しだけの雨だ。

そんなことを思いながら午前中を過ごし、お昼休憩が終わって午後の業務をこなしていた時。

1人の男性がお店に入ってきた。
何かを探しているのかキョロキョロと棚を見て回っている。

気にせず本の整理をしていたのだがさっきの男性をふと思い出して店内を見渡してみた。

するとまだ棚の間を行ったり来たりしている。
目当ての本を見つけられてないのだろうか、

一応接客業なのだが人見知りのせいで9年経った今もお客様に声をかけるのは勇気がいる。

しかもめがねをしているからか暗く見られがちで声をかけても大丈夫と遠慮されることもしばしば。

でも、その男性には声をかけないといけないような気がした。

なぜかは分からないけれど。

極力明るめの印象になるように心がけて。

「何かお探しですか？」