あまくかおる

４４ ページ45

．





「もー、二人共どこ行ってたんだよ！」

「ごめん、ごめん。『やっぱり、俺達はパレードより乗り物に乗りたいよな〜』って話になって、裕太とカリブ乗って来たんだ」

「パレード中カリブ超空いてるの！３回乗った！」

「連絡くらいしてよ。わたも急にいなくなるから北山寂しそうにしてたよ！」




あれから、カリブ付近にいるという横尾さんとたまの二人に合流した。

藤ヶ谷は連絡無しにいなくなった二人をジト目で見るけど、俺は二人が俺のためにそうしてくれたことを知っているので、藤ヶ谷の後ろで両手を合わせて謝った。

そんな俺を見て横尾さんがクスリと笑った。





「ごめんって。それより二人は楽しめたの？」





“ 二人は ” と言いながら、横尾さんはちゃっかり俺の目を見てくる。



きっと、俺の表情で全てを理解してるだろうに、彼はどうしても俺の口から言葉を聞きたいらしい。



心の中で「このドエスめ」と呟くけれど、それ以上に横尾さんには感謝しているつもりだ。

もちろん、たまにも。



だから、ちゃんと「楽しかったよ」って報告くらいしないと。





「俺達は最高の思い出を作れたよ。ね、北山？」





だけど、俺が答えるより先に答えたのは藤ヶ谷だった。



四月始まり

名前も知らなかった藤ヶ谷に惹かれた。

そんな俺が “ 今 ” 藤ヶ谷の隣を歩いて、一緒に笑って、触れ合って、少しだけ素直に気持ちを伝えられて…

俺にとって今日は本当に “ 最高の思い出 ”
になった。

それだけで、幸せだったのに。





「 ( 藤ヶ谷にとっても最高の思い出なんだ ) 」





それが、嬉しくて。





「本当、楽しかった…！」





俺は今日一番に笑えた気がした。





．

４５→←４３

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す