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「みつ、チケット預かるよ」
「ん?お、おう?」
「じゃあ、たまよろしくね」
「うん、任せてよ」
入場するとたまが俺の手の中にあるチケットをヒョイッと抜き取る。
藤ヶ谷もチケットをたまに渡して「よろしく」なんて言っているけど、一体何故?
「じゃあ、帽子はよろしくね」
「うん、買ったら電話する」
俺だけ蚊帳の外でどんどん話を勧めていく三人。
訳が分からないでいると、不意に左腕を引かれた。
「じゃあ、行こうか北山」
「へ…?」
「もう、みつ話聞いてなかったの?俺とたまはファストパス取るから、みつと太輔は帽子買ってきてって言ったでしょ?」
「はぁ!?」
何それ、初耳なんだけど!
なんて思っていると横尾さんの後ろでニマニマ笑っているたまと目が合う。
“ また、お前か!” と目線で訴えると “ 知らないよ ” とでも言うように首を振った。
「皆で帽子買ってからパス取ればよくない?」
「だから、普段はそれでいいけど今日はゴールデンウィークなの!」
「ん…、うん?」
「沢山乗るためにはそんなことやってられないってこと!」
「ってことで、また後でね〜みつ ♪ 」
「は!?ちょ、たま!!」
ヒラヒラ手を振って横尾さんと歩いていくたまに伸ばした手が掴まれる。
「ほら、行こう?」
「っ…!」
微笑む藤ヶ谷。
それだけでいつも胸が苦しくなるのに
「 ( っ…、なんで手なんて繋いでるの!? ) 」
ギュッと握られた掌に汗が滲む。
顔だって火が出そうなほど熱くて、俺のキャパはもう限界寸前。
「ふ、藤ヶ谷…」
「っ、ごめん、つい!」
振り向いた藤ヶ谷に目線で繋がれた手をアピールすれば、慌てて離された。
俺につられたのか、藤ヶ谷の頬まで赤くなって、照れたように目線がそらされる。
離れてしまった手は寂しいけれど、なんだか少しだけ俺のことを意識して貰えたような気がして嬉しかった。
「ごめん、店の中、特に混んでるからさ」
「うん」
「さっきみたいに俺の服掴んでおいて?」
あたりまえだけど藤ヶ谷は優しい。
だから、手を繋いでくれた。
だから、こうしてはぐれないように心配してくれた。
それは、俺が “ 友達 ” だから――
「 ( ちゃんと分かってるよ) 」
俺はギュッと藤ヶ谷の裾を掴む。
「ありがとう、藤ヶ谷」
「うん」
俺が裾を握ったのを確認して、藤ヶ谷がふわりと微笑んだ。
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ぴーすけ(プロフ) - kouseiさん» Sさん、いい感じにしめてくれましたよね!笑 切なかったり、楽しかったり。まだまだいろんな2人が見れると思うので、引き続きお付き合いお願いします( ´ ▽ ` )ノ (2016年3月25日 12時) (レス) id: ed0adb3f82 (このIDを非表示/違反報告)
ぴーすけ(プロフ) - たいちゃんらぶさん» 2人にとって、最高の思い出にさせてあげることができて本当に嬉しいです。楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうので、これから2人はまだ現実で色々悩んでもらう…かも!?です。何せ先を決めてないのでこれからどうなるか私にもまだまだ未知数です。笑 (2016年3月25日 12時) (レス) id: ed0adb3f82 (このIDを非表示/違反報告)
kousei(プロフ) - えぇっ!最後がすごく気になる感じに… 夢は覚めるものって何があったんでしょう?なんだか切ない予感がします(泣) (2016年3月24日 20時) (レス) id: 2f946ced33 (このIDを非表示/違反報告)
たいちゃんらぶ(プロフ) - ふたりにとって最高の思い出♪にキュン。太ちゃんもみっくんもお互いの言葉が本当に嬉しかったんだなぁって私も嬉しいです♪楽しい時間が過ぎるのは早いですよね‥太ちゃんの様子・・心配で気になります‥どうしたんだろ‥夢の時間が終わっちゃった(泣)続き待ってます (2016年3月23日 20時) (レス) id: c5bfccd947 (このIDを非表示/違反報告)
たいちゃんらぶ(プロフ) - 渉サン玉チャンの粋な計らい・・ホントかっこいいですよね♪そのキモチを受け止めてみっくんが太ちゃんに一生懸命伝えた言葉‥見ていてグッときました(泣)パレードは見れなかったけどふたりにとっては素敵な時間♪という想いが伝わってきました♪もぅすごーく感動 (2016年3月21日 9時) (レス) id: c5bfccd947 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:S・ぴーすけ | 作成日時:2016年2月15日 0時