検索窓
今日:21 hit、昨日:0 hit、合計:298,567 hit

18 ページ19

何度も読み返したトーク画面。

あのあと了解、と短く送った俺に、藤ヶ谷は楽しそうな可愛らしいスタンプを送ってきた。

たったそれだけのやりとりなのに、起きた時も、昼ごはんの時も、…今も。気づけば何度も読み返していた。

…気づかないふり、しないといけないのに。





「北山ー!」





名前を呼ばれ、見ていたトーク画面を閉じる。

少し講義が早く終わったため、大学内にあるカフェテラスで待ってるとメッセージを送っておいた。律儀な彼は、きっと急いで走ってくるだろう。呼ばれた方を振り返れば、やっぱり予想は的中していた。





「急がなくていいっつったのに」

「いや、…早く、会いたくて…」





肩で息をしながらそれでも嬉しそうにそう言う藤ヶ谷に、思わず眉間に皺を寄せる。

…他意は、ない。分かってる、こいつはこんな風にストレートに気持ちを表現するやつだ。





これから藤ヶ谷のことをもっと知りたい。

もっと一緒にいたい。

だから、友達でいることを決めた。…自分の気持ちに気づかないフリをして。





揺らぎそうになる決意を引き止めるように、顔に力を入れる。なに難しい顔してんの、と藤ヶ谷がおかしそうに笑った。…誰のせいだよ。





「…2人で、ってはじめてだね」





そう言う藤ヶ谷が、嬉しそうで、…少し照れくさそうに見えるのは、…俺の勘違いなんだろうか。
気づけば自分の都合のいいように考えてしまう思考を、首を振って追い出す。



藤ヶ谷は彼女がいるんだ。

同性を、…俺を、そういう目で見てるはずなんてない。…絶対、ない。



どしたの?とこちらを覗き込む藤ヶ谷になんでもない、と返せば、そっか  とあの優しい顔で笑った。





「行こっか」





…それでも。
嬉しそうな顔も、照れくさそうな顔も、心配そうな顔も。
それが全て自分のために見せてくれるものだということに、泣きそうなくらい切なくなる。





いつか、この感情に慣れる時がくるのだろうか。

当たり前のように、友達としてそばにいれる時がくるのだろうか。





切ない気持ちに蓋をして、背中を向けた藤ヶ谷に気づかれないようこっそり下唇を噛んだ。

19→←17



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (297 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
694人がお気に入り
設定タグ:藤北
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ぴーすけ(プロフ) - kouseiさん» Sさん、いい感じにしめてくれましたよね!笑 切なかったり、楽しかったり。まだまだいろんな2人が見れると思うので、引き続きお付き合いお願いします( ´ ▽ ` )ノ (2016年3月25日 12時) (レス) id: ed0adb3f82 (このIDを非表示/違反報告)
ぴーすけ(プロフ) - たいちゃんらぶさん» 2人にとって、最高の思い出にさせてあげることができて本当に嬉しいです。楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうので、これから2人はまだ現実で色々悩んでもらう…かも!?です。何せ先を決めてないのでこれからどうなるか私にもまだまだ未知数です。笑 (2016年3月25日 12時) (レス) id: ed0adb3f82 (このIDを非表示/違反報告)
kousei(プロフ) - えぇっ!最後がすごく気になる感じに… 夢は覚めるものって何があったんでしょう?なんだか切ない予感がします(泣) (2016年3月24日 20時) (レス) id: 2f946ced33 (このIDを非表示/違反報告)
たいちゃんらぶ(プロフ) - ふたりにとって最高の思い出♪にキュン。太ちゃんもみっくんもお互いの言葉が本当に嬉しかったんだなぁって私も嬉しいです♪楽しい時間が過ぎるのは早いですよね‥太ちゃんの様子・・心配で気になります‥どうしたんだろ‥夢の時間が終わっちゃった(泣)続き待ってます (2016年3月23日 20時) (レス) id: c5bfccd947 (このIDを非表示/違反報告)
たいちゃんらぶ(プロフ) - 渉サン玉チャンの粋な計らい・・ホントかっこいいですよね♪そのキモチを受け止めてみっくんが太ちゃんに一生懸命伝えた言葉‥見ていてグッときました(泣)パレードは見れなかったけどふたりにとっては素敵な時間♪という想いが伝わってきました♪もぅすごーく感動 (2016年3月21日 9時) (レス) id: c5bfccd947 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:S・ぴーすけ | 作成日時:2016年2月15日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。