あまくかおる

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ここ数日ずっと同じことを考えていた。



それは、そう、藤ヶ谷のこと。



講義の時間も

バイトの時間も

一人で風呂に入ってる時間も…。



ずっと、ずっと、

あいつのことばかり考えていたんだ。



“ 俺は藤ヶ谷のことが好きなのか？”



そんな疑問を何度も自分にぶつける。



“ 俺は男だから恋愛感情であいつを好きだなんてありえない ”



そう否定しても



“ じゃあ、なんであいつの笑顔がみたいなんて思うの？ ”

“ なんであいつが悲しい顔すると俺まで悲しくなるの？”

“ なんであいつが笑うと胸が苦しくなるの？”



そうやって心の中で自問自答。

だけど、結局、辿り着く答えは一つだけ。





「本当は気付いてる………、」





俺は藤ヶ谷のことが好きなんだ。



――「ありがとうございます」



そう笑いかけてくれた日から…

きっと、ずっと、藤ヶ谷のことが好きだった。



だけど、

男なのに、男に恋してなんてしてもいいのか？



――「でもさ、好きになっちゃったらしょうがなくない？」

――「だって別に、犯罪でもないじゃん。好きになった相手がたまたま男だっただけ。でしょ？」



たまはああ言っていたけれど

藤ヶ谷がこの気持ちを知ったらどう思うのだろう？

もしも、この感情を “ 気持ち悪い ” と拒絶されたら――





「っ…！！あっつい！！」





俺は勢い良く湯船から立ち上がる。

やばい、逆上せそう。

風呂で考え事なんてするべきじゃない。



俺はタオルで余分な水分を拭き取り

下着を履いてリビングに移動した。



濡れたままの髪の毛から水滴が落ちるけれど

首にかけたタオルが吸い取ってくれるので気にしない。



ベッドに置いた携帯を手に取ると

LINEの通知が３件ほど溜まっていた。

俺はアプリのアイコンをタップして

その通知を開いた――





［ こんばんは。藤ヶ谷だよ。
　 わたから北山のLINE教えてもらった！
　 明日のことわたから聞いた？ ］

［ 明日、わた４限で授業が終わるから
　 たまと先に合流するんだって！
　 だから、俺と北山は６限終わったら
　 待ち合わせしない？ ］

［ ファミレスまで一緒に行こうよ ］





「藤ヶ谷…」





やっぱり、もう少しだけ、この気持ちに気付かないフリをしてもいいですか？



だって、やっと、お前と友達になれたんだ。



もっと、藤ヶ谷のことを知りたい。

そう思ことはいけないことですか？





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