あまくかおる

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「来週、飯行くときよこーさんと藤ヶ谷も一緒になったから」





大学の授業が終わりバイト先。

今日はたまと入りの時間が同じだったようで

お互い黒いシャツに着替えながら先程の話をする。





「おい、聞いてる？…って、なんだよ」





エプロンを巻きながら返事のないたまの顔色を伺えば

ニヤニヤとこっちを見ていた。



最近、こいつは表情をすることが多い。

そして、決まってーー





「んふふ、聞いてる、聞いてる。そっか、ガヤも来るんだ〜 ♪ 」





内容は藤ヶ谷のことだ。





「俺の話聞いてた？“ よこーさん ” と藤ヶ谷な！」

「はいはい、分かってるよ〜」

「じゃあ、そのニヤニヤ顔やめろ！」

「もともとだよ？」

「んなわけあるか！宮田か！」

「鼻と同じにしないでよ！」





宮田＝たまのクラスメイトの話を振ると

あからさまに嫌な表情をするたま。

まあ、これが彼の愛情表現なのだが…。





「でも、ミツ良かったね」

「ん？なにが？」





先程のニヤニヤ顔ではなく

純粋な笑顔を俺に向けたたま。

俺は訳が分からず首を傾げる。





「何がって、片思いの相手に近付けたんだよ？」

「ああ、藤ヶ谷のことか」

「うん」

「……？」

「……？」





ん？

片思いの相手が藤ヶ谷？





「って…！！誰が藤ヶ谷に片思いなんてするか！！」

「えっ…！？そ、それ本気で言ってるの？」

「当たり前だ！！」





な、なんで男の俺が藤ヶ谷に片思いなんて！

ない！絶対にない！絶対に！





「うわ…、鈍感だなぁ…」





たまが呆れた表情で俺を見下ろす。

悔しくて背伸びしたけど

背伸びしても俺の方が目線が下でたまに鼻で笑われた。





「まあ、自分でもすぐに分かると思うよ」





なんて、タイムカードを押しに行ったたまの背中を見送る。



俺が藤ヶ谷に片思い…？

それってつまり

俺が藤ヶ谷のことを好きってことだろ…？



藤ヶ谷のことが好き？



ーードクン、



違う、違う、違う。



俺は急に胸が苦しくなって

エプロンの上からギュッと左胸を抑えた。





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