episode6 ページ6
*You side
「お待たせー!」
駅近くのカフェの前で里香を待っていると、サングラスと帽子を掛けて私に手を振る姿が見えた。
スマホを鞄に直して、2人で歩き出す。
ライブの話の続きをするのだろう。
だけど、私の意思は変わらない。
彼には二度と会わないって決めたから。
仮に、それがライブで私を目視出来なかったとしても。
同じ空間に居ることさえ許されない気がするから。
「ここ空いてそうだね〜」
そう言って指を差したのは私と彼が最後に会った喫茶店。
あの時のことが昨日の事の様に思い出させられる私は思わず目を逸らしたくなるのを堪えて入って行く里香の後を着いて行く。
「いらっしゃいませー何名様ですか?」
「二名で」
「空いてる席どうぞー」
そう言って店内に案内された私達は人が周りにいない場所を選んで腰を降ろした。
「ご注文お決まりになりましたらそちらのベルでお呼び下さい」
そう言ってメニューを渡される。
食べる気にもならない私はドリンクだけ選んで、メニューを里香に渡す。
「じゃあ、私もドリンクだけにしよー」
店員を呼び、注文を済ませて本題に入る。
「あのね、里香」
「ダメだよ。もう行くって決めたんだから」
「...分かってよ。無理だって言ってるでしょ?」
「チケット無理言って用意してもらったんだよ!?」
それは、勝手にした事でしょ?
そう言いたかったけど、これ以上言えば喧嘩になる気がして私は黙るしかない。
気まずい雰囲気のまま、運ばれたドリンクがそれぞれ目の前に置かれる。
私は席を経って御手洗に逃げた。
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作者名:まるのうち | 作成日時:2022年9月23日 23時