今日からうちの子 (ページ35)

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第35話ページ35

一方シルクは、メンバーと連絡を取りながらベランダからAの帰りを待っていた。
熱も上がってきてしまったのか目眩がするようになり、正直立っていられない。
一度部屋に入ろうとした時だった。
下から誰かに話しているような幼い声が微かに聞こえる。

ｼﾙｸ「A…？」

遠くを目を凝らして見ると、大人のような影と小さい影。
見覚えのあるりんごの鞄をぶら下げながら、近所の大学生のコンビニの店員と手を繋いでこちらへ歩いて来ている。
その小さい影がAだと認識するより、体が動く方が早かったかもしれない。
重い体を引き摺って、フラつきながらも外へ走った。

ｼﾙｸ「A！！」

自分に向かって走ってくるAを抱きとめて、無事を確かめるように力を込めた。
怪我一つ無く、事件に巻き込まれる事も無く、普段通りの元気な姿に涙が出そうになる。

ｼﾙｸ「こんのバカッ、兄ちゃん心配させんな！」

『ごめしゃい』

Aの頭を撫でてから一緒にここまで来てくれた大学生に礼を言う。
大学生は「お大事に」と微笑んで帰って行った。
そして帰ったタイミングで一度家に戻ったマサイがやって来てシルクと手を繋いでいるAを見て安堵の溜め息をついた。

ﾏｻｲ「A！」

『ましゃ！』

ﾏｻｲ「良かった…本当に良かった」

『ましゃ、ごめしゃい』

ﾏｻｲ「もう良いよ、皆にも後で謝ろうね」

『う』

元気よく頷いてシルクの手を握った。
シルクは安心したからか、気が緩んだからか、体の力が抜けてマサイに肩を担がれながら家に戻って寝かされた。

『にちゃ、おくすり』

ｼﾙｸ「何で持ってんだ…」

『おちかいした』

ｼﾙｸ「おつかい…？」

Aがお金を持っている訳ないし、風邪薬を上手にチョイスしたとは思えない。
という事はさっきの大学生がAに持たせてくれたという事だ。

ｼﾙｸ「改めてお店の兄ちゃんにお礼行かなきゃな」

『う！』