番外編―舞い込んだ依頼― ページ8
「それで私は幼児化したわけです」
事の顛末を話し終えると微妙な沈黙が探偵社の事務所を支配した。
「ポートマフィアって普段そんなに緩いの?」
「……まぁね」
私に云わせれば“緩い”というより“天然が多い”という印象なのだが。
隣で「マフィアの威厳が……」などと頭を抱える幹部はその最たる例である。
「話は判ったよ。でも何で態々幹部様が来たんだい?」
そう尋ねた与謝野女医に私の話はまた数刻前に遡る。
幼児化した私を凝視する四人。暫しの沈黙の後――
「この液体にこんな副作用があったとは……。だから科学は面白い!!うひゃひゃひゃひゃ」
毛ほども空気を読まない科学者と
「オイ、立原逃げてんじゃねぇぞ」
逃亡を目論む部下と、それを止める上司。
「……可愛い」
だらしのない表情で私を見詰める遊撃隊隊員。
頼りになるのは自分だ。ぶかぶかになったセーラー服の袖を揺らしつつそう確信した。
「オイ梶井、他に副作用とやらはねぇんだろうな?」
「科学とは常に偶然の産物!僕は知る由もない!」
見事なほどの責任放棄――などと呆れていると中原幹部が近づいて来て問う。
「他に躯に違和感とかねぇか?大丈夫か?」
そしてひょいと私を抱き上げる。
その瞬間、小さな躯には大き過ぎるセーラー服が肩を滑り、床に落ちた。
つまり――……すっぽんぽん。
「な"ぁぁ⁉な、何してんすかアンタ!」
「と、と、取り敢えずこれ!」
衝撃のあまり幹部をアンタ呼ばわりする立原さんと咄嗟に私をセーラー服でぐるぐる巻く樋口さん。
そして思考停止中の中原幹部。
私は我ながら冷静に溜息を吐いた。
「善かったですね、見たのが“幼女”の裸で」
それですっと冷静になる三人。
そう、この状況で最も考えなくてはならない問題は首領へ如何説明するのかということ。
そして責任転嫁合戦の幕が切って落とされた。
「元はと云えば奴を放り投げた立原の責任だろ」
「待って下さいよ!どう考えても意味判んねぇ薬作った梶井の責任ですよね⁉」
「僕は科学者としての義務を果たしただけだ!先ずこんな狭い処で発砲するからビーカーが割れたわけで――」
「じゃあ凡ての根源はゴキブリじゃないですか!」
「あ"ぁー!その単語を云うなァー!!」
私はその騒音を聞き流しつつ、最早頼るべき場所は一つだろうと結論を出した。
「中原幹部、私を探偵社に連れて行って下さい」
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ギラッフェ(プロフ) - 雪だるまさん» お待たせいたしました!待っていてくださってありがとうございます! (10月18日 8時) (レス) id: 577991cf97 (このIDを非表示/違反報告)
雪だるま - 待ってましたー!ありがとうございます!これからも応援します!! (10月17日 22時) (レス) @page49 id: 34bbee5856 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - 雪だるまさん» コメントありがとうございます!両方楽しんでいただけて何よりです!文スト原作の展開の読めなさに様子見中でした💦お待たせしますが必ず続けますのでお待ちいただけると嬉しいです! (10月3日 23時) (レス) id: a12ab69eab (このIDを非表示/違反報告)
雪だるま - コメント失礼します!貴方様の作品は銀魂の方も読んでいるんですが、どっちも大好きです!こっちの投稿も待ってます! (10月3日 16時) (レス) @page48 id: 34bbee5856 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - 豆腐プリンさん» コメントありがとうございます!1番だなんて恐れ多いっ!番外編もありがとうございます。両者滞っておりますが原作が溜まってきましたのでそろそろ更新いたします。楽しみに待っていてくださると嬉しいです (2023年2月27日 21時) (レス) id: 2e6ffd9878 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2019年2月26日 19時