happIness*2-47 ページ47
風邪を引いている間、翔くんはとても優しかった。
たくさん名前を呼んで、甘やかしてくれて、
甲斐甲斐しく看病をしてくれて。
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熱が出て2日目は、
仕事の合間に一度様子を見に帰ってきてくれて、
となりに並んで、一緒にプリンを食べた。
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買ってきてくれた風邪薬は飲んだけど、
今回も"寝たら治った"
2日目の夜には熱も微熱まで下がっていて、3日目には平熱に戻った。
病院なんて行かなくても、この程度なら自然治癒できることを、
私はなんとなく知ってしまっている。
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熱も下がった私を見て、彼は安心したように仕事へ向かう。
ああ、いやだな。
優しくされたら辛いくせに、もっと甘やかして欲しかったと思う自分もいる。
ああ、いやだな。
別れ話は、いつになるんだろう。
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風邪が良くなって、ぼんやりしながら毎日を過ごす。
「別れて欲しい」と言われるのが怖くて、
あの記事の話題になるのも嫌で、意識的に彼を避けた。
ベッドで目を閉じれば、そんなことも容易かった。
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あの記事はもう、落ち着いたのだろうか。
彼を好きなファンの子たちが、悲しんでいなければ良いのに、と、
自分のことを棚にあげてそんなことを思う。
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青いアプリを立ち上げて、名前を入れて検索したら、
【熱愛報道の櫻井翔&A子さん 突撃取材動画！】
という文字の羅列が最初に出てきた。
え、と思う。動画？……一緒にいたってこと？
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もう、何を期待しても無駄なのに、
あの日の優しさに触れて、間違いかもしれないと
心のどこかでそう思っている自分もいて。
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見たくないくせに、見たら後悔するのを分かっていて、
リンクをタップする、ああ、ほんとに、最悪だ。
少し荒い画質、声を掛けられて「うわっ、びっくりした」と
返しているのは、まぎれもなく大好きな声で。
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ああ、ひとりだ。
良かった、別々の取材動画らしいと安心したのに、
記者からの質問に、否定せず曖昧に笑っている彼の顔が、
あの白い彼女のことが大切だと言っていて。
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『「工藤さんはタイプじゃない」って話は』
「そんなこと言ったことないけど(笑)
まぁ明確に言葉にするならそうなんですかね」
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動画の最後の方で、
困ったようにそう言う彼を、
きらいになれたら良いのにと、思った。
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