happIness*2-39【↓0507更新】 ページ39
名前を呼ばれて、目を開ける。
頭が重い、自分が今どこにいるか分からない、
ぼんやりと焦点が合わなくて、瞬きを繰り返す。
.
名前を呼んだのは、目の前にいる彼らしい。
あれ……どうして
考えようとするけど、ぐるぐるしていて無理だった。
.
「熱すごいよ、身体平気？」
「……」
.
その言葉で、あぁ、と思った。通りで。
頭が痛いし重い、口許まであげられた布団のせいか、
しっかりと汗をかいているのが自分でも分かる。
あれ、布団……？
.
「黒川さん心配してたよ」
「……」
「薬飲もう……風邪薬ではないけど。一応解熱もできるっぽいし。ゼリー見つけたけど……食べてからにする？」
.
黒川さん……あぁ、連絡しなかったから。
病院から事務所に連絡が入ったのかもしれない。
翔くんは心配してくれなかったんだろうか、
……何を？、わたしを。
翔くん……あぁ、しょうくんだ、会いたかった、あいたくなかった、
.
「A？」
「、」
「起きれる？」
.
彼がわたしの名前を呼ぶ。
自分が何を考えているかが分からなくなって、
起きるの……？と思いながら腕に力を入れる。
思ったより熱が高いのか、上手く起き上がれないところを、
彼が当たり前のように支えた。
.
ベッドにあがってわたしの後ろにまわった彼が、
背もたれになるように肩を引き寄せて、
「寄りかかって良いよ」と言った。
あたたかくて優しい声に、ふらりと力が抜ける。
.
ベッドサイドから小さなゼリーを手に取った彼が、
蓋を取ってそれを私に持たせる。
優しい、触れた指が愛しい、離れていってしまう。
.
"Aはタイプじゃない"
.
のろのろとゼリーを口に持っていった瞬間、
その文字が頭を通りすぎて、息が止まる。
あぁ、そうだ、なんで、こんなにすきなのに。
.
しょうくんは、わたしのことが好きじゃなくて。
新しく、好きな人がいて。
それで……それで？
別れようって言われて……ちがう、まだ、言われてない、まだ。
.
ぼたぼたと涙が落ちる。
苦しい、止まらない。頭が痛い、ぐわんぐわんと世界が揺れる。
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