happIness*2-38 ページ38
(翔side)
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泣いている彼女が、何度か深呼吸をして、
震えた指先をベッドサイドの薬に伸ばすので、
Aから少し離れてそれを掴む。
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錠剤を2粒、掌に出してやって、
それを口に入れたのを見てから、
ペットボトルを手に握らせてやる。
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細い喉が上下に動いて、
薬を嚥下したことを俺に伝えた。
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無理やり止めたみたいな涙は、
まだ少しだけ残っていて、
とても静かに頬を濡らす。
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「ゼリーいらない？」
「、」
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小さく頭が上下したので、
舐められただけのそれを奪う。
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「どっか辛いところは？」
「……、」
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少しだけ考えるように止まった後、
ゆるゆると頭が横に振られた。
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「黒川さんには連絡してあるから」
「、」
「明日病院行きなね」
「、」
.
最初の言葉には縦に、続いた言葉には横に振られて、
想像通りのリアクションに思わず笑ってしまう。
こんなに辛そうなのに、病院は嫌らしい。
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「何でよ、熱高くてしんどいでしょ？行けばすぐ治るよ」
「、」
「もう……」
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子どもが駄々をこねるみたいに、
首を横に振られる、頑なだ。誰に似たんだろうか。
こういう時、彼女は根性論に近い考え方だよなぁと思う、
「寝たら治る」を本気で体現しに行く人だ。
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「行かないの？」
「、」
「黒川さんに説得してって言われてるんだけどなぁ……」
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小さく息を吐くと、甘えるようにすり、と身体を寄せてくる。
うわ、ずる……
俺が何も言えなくなるのを知っていて、そういうことを。
はぁ……と何度目かのため息をついて、
ゆるりと甘えてきた頭を撫でる、やっぱり熱い。
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「寝な、起きたらきっと良くなってるよ」
「……」
.
彼女の根性論に賛同するような言葉を吐いて、
Aの顔を見る。
瞼はすでに閉じられていて、長い睫が微かに震えていた。
.
そっとベッドに寝かせて、アイスノンを枕にしてやる。
布団を掛けて、もう一度顔を見る。
眠るそこには、涙のあとが残っていた。
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