happIness*2-37 ページ37
(翔side)
.
「A？」
「、」
「おはよ、起きた？」
.
そっと肩に触れて名前を呼ぶと、
ゆるゆると瞼をあけたAが、
ぼんやりと俺の方を見てまた数度、ゆっくりと瞬きをする。
.
「熱すごいよ、身体平気？」
「……」
「黒川さん心配してたよ」
.
汗ではりつく前髪に指先で触れる、
じわりと伝わる熱はやっぱり高くて、はぁ、と息を吐いた。
.
「薬飲もう……風邪薬ではないけど。一応解熱もできるっぽいし」
「、」
「ゼリー見つけたけど……食べてからにする？」
.
ゆらゆらと俺を黙って見つめる彼女の目は、
熱のせいなのか潤んでいて、今にも泣き出しそうだった。
A？ともう一度名前を呼ぶ、
返事をするように、瞬きが返ってきた。
.
「起きれる？」
「、」
.
腕に力を入れた彼女を見て、手助けをする。
ぐったりとした様子だ。
ベッドにあがって後ろに回り込む、「寄りかかって良いよ」
と言うと、力を抜いたAが背中を預けてくる。
.
ベッドサイドにてを伸ばし、小さなゼリーの蓋を取って彼女に手渡す。
触れた指先は熱い、
いつもは冷え性で凍りそうなくらいあんなに冷たいのに。
.
ゆらりとゼリーを口許に持っていった彼女は、
それを咀嚼することなくぺろりと舐めて、
……そして、ぼたぼたと泣き出した。
突然のことに、後ろからぎょっとする。
.
「A？」
「、」
「どした？起きるの辛い？」
.
背後から覗き込む、Aはゼリーを持ったまま、
悪夢に魘されているかのように涙を流している。
何度も名前を呼んで涙を拭う、この度に彼女は細い指で、
ぎゅうとシーツを握りしめて、力なく首を横に振る。
.
「なんでそんな泣くの……」
「、」
「ほらおいで」
.
熱で心寂しくなったんだろうか、
両腕に閉じ込めるみたいに、ぎゅうぎゅうと抱き締める。
せめて呼吸が落ち着くように背中をさする、
やっぱり身体は暑くて、また、小さく息を吐いた。
.
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