happIness*2-22 ページ22
(翔side)
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「ごめん、お待たせ」
「全然？お疲れさま」
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バーよりもっとカジュアルで、居酒屋よりは落ち着いた雰囲気のそこは、
知り合いがやっている店で、ここで誰かと待ち合わせすることも少なくない。
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長い黒髪を髪飾りでひとつにまとめたその人は、
俺の到着まで読んでいたであろう単行本を閉じて、
切れ長の瞳を数度瞬かせてこちらを見た。
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「翔っていつも忙しそうよね」
「あー、そうか？」
「ワーカーホリックも程々にしないと身体壊すよ」
「ご忠告どうも」
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そんなこと言ったって、別にこれが苦痛に思ったことも、
キャパオーバーに感じたこともない。
店員にノンアルコールのドリンクを頼んだら、
目の前の彼女は「飲まないの？」と首を傾げた。
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「今日車だから」
「そう」
「涼子は気にせずどうぞ」
「別に気にしたことなんてないけど」
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くすりと笑う彼女に、確かに気を遣われたことなんてないなと思い返す。
さっぱりした性格は一緒にいてとても居心地が良くて
それは歳を重ねても変わらない。
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「はい、これ」
「あぁ、サンキュ。忙しいのに悪いな」
「私は別に。一応"定時"がある世界で生きてるし」
「一応、ね」
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どこの世界も"定時"なんて、あってないようなものだろう。
俺たちが生きる世界にだって、"押し"とか"巻き"という言葉が存在するくらいだ。
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「こんな時間に呼び出しても、すぐ飛んでくる翔の方が心配なんだけど」
「なんでだよ」
「何してたの？仕事？」
「……いや、普通に家にいた」
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結果として、ベッドに"置き去り"にしてきてしまった
Aを思い出す。ため息が漏れそうになって、
寸前でそれを飲み込んだ。
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「明日から学会で東京離れるから。今日しかなくて」
「いや、別に平気。むしろごめん」
「論文とかいくつか入ってる。あとは医学書の抜粋とか、簡易的な症状のレベル分けみたいなのとか」
「助かる」
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薄くファイリングされたものが数冊、茶封筒の中に入っていて、
その中の一冊を取り出してぺらぺらと捲ってみる。
小さな字の羅列を目で追いながら、
カランと音を立てる液体に口をつけた。
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