happIness*1-6 ページ6
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一緒に暮らし始めてから数年、
翔くんは少しだけ、家庭的になった。
相変わらずキッチンに立って料理はしようとしないけど、
時間があれば掃除や洗濯くらいはしてくれる。
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今までは掃除も洗濯も、どちらかと言うと私の仕事である方が多かったし、
それが苦だとも特段思ったことはなかったけれど、
手伝ってくれるのは嬉しいし、助かる。
今日も彼は私から部屋着を攫って、洗濯機をかけに洗面所へ向かった。
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冷蔵庫から卵を取りだしてボウルに割入れているところに、
彼が洗面所から戻って来て、
冷蔵庫にある水が入ったペットボトルを手に取った。
そして2つのコンロでフライパンと小鍋に入った水を温めていた私の後ろに立って、
そういえば、と口を開く。
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「そういえば」
「ん?」
「昨日局の前に記者いたから気を付けて」
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何でもないと言うようなトーンでそう伝えてくる彼は、
水を飲みながら砂糖が入った入れ物をこちらに寄越してくる。
それを受け取って溶いた卵の中に入れた後、私は無言でかき混ぜた。
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いくら幸せでも、それを壊そうとする人がいなくなるわけじゃない。
この数年で、私はメンバー全員と付き合っていることになっていた、
媒体によって私の恋人の名前は変わっていたし、
同じ週刊誌の中でも時期によって恋人の名前は変わっていた。
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私はずっと翔くんと付き合っていたし、
この数年、他のメンバーにそれぞれ恋人ができたりしていたことも知っている。
今でも続いている人もいれば、とっくに別れてしまった人もいるけれど。
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「…次に付き合ってることになるのは、誰だろうね」
「あー、ごめん。朝から嫌なこと言った」
「…ううん、大丈夫」
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彼の言葉に、首を振ってこたえる。
フライパンに掌を近づけて温度を確認した後、溶いた卵を流し込みながら、
大丈夫じゃない、と思った。
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