happIness*1-18 ページ18
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「おはよ」
「おはよう、朝ごはん食べる?」
「んー、食べる……、今日なんかあったっけ?」
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朝、寝室から起きて来た翔くんが、
私の姿を見て、きょとんと首を傾げた。
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「あ、お昼過ぎから出かけるの」
「…ああ、今日オフだったっけ」
「うん、夜ご飯までには帰るよ」
「珍しい…どこ行くの?」
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ちょっと遅めの朝ごはんだけど、問題はないだろう、
ヨーグルトにブルーベリーのジャムを落としながら、
翔くんの方を見る。
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「ミュージカル観に行ってくる」
「ああ、なんか前言ってたね」
「うん、ちょっと勉強がてら」
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彼は椅子に座って頬杖を突きながら私のことをじっと見た後、
ふにゃ、と目元を緩ませて
そのワンピース可愛いね、と言った。
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「綺麗な色でしょ」
「うん、似合ってる」
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ふわふわと揺れるワンピースの長い丈を左右に揺らしながら答えてみる。
翔くんはヨーグルトをぐるぐるとかき混ぜながら
くすくすと笑う。
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「無邪気」
「今日翔くん帰って来るのはやい?」
「あー…どうだろう、そんな遅くないと思うけど」
「じゃあこれでお帰りなさいするね」
「なんで」
「可愛い恰好してるから」
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自分で言って面白くなってしまって、
あは、と笑うと彼は私のことをじっと見つめた後
耐えきれなかったというように息を吐く。
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「照れるなら言うなよ(笑)」
「修行が足りない」
「しなくていいから」
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混ぜ終わったヨーグルトを口に運びながらそう言う翔くんに
つまんないの、と返すけど
そんなことなくて、すごく楽しくて、幸せで
これ以上なんて望まないから、ずっとこのままでいたいとすら思う。
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「観に行くやつ、どんな話なの」
「え、知らない」
「知らないで観に行くのか」
「観に来てねって言われたから」
「誰が出るの?」
「浩樹くんとか」
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誘ってくれたその人の名前を出すと、
「うわ出たよ」と苦い声を出されてしまった。
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「でも多分、死んじゃう役だと思う」
「なんで」
「いつもそうだから?」
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面白いから時間があれば観に来て、と言われただけで
具体的な内容までは聞いていないからどんな役なのかも知らないのだけれど、
なんとなく、今回もそうなんじゃないかと思ってしまう。
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「なんだろう…今少しだけ同情した」
「なにそれ(笑)」
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まあ息抜きしておいでよ、と
彼はそれ以上何も言わずに、にこりと笑った。
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