happIness*1-2 ページ2
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「…終わった？」
「んー？とりあえず」
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ぐりぐり、と首を回しながらそう答える彼は
ソファに座っている私の方を向いて
私が持っている紙の束をひょい、と取り上げた。
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「Aはなんのお仕事」
「お仕事を決めるお仕事」
「おお…決めがいがありそうな数」
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ずらりと一覧になって書かれたそれらは、
再来年の春から夏にかけて行われる舞台演目の一覧表だ。
オーディションを受ければ役を得られる可能性があるもの、
出演依頼が来ていて、こちらが承諾すれば出演が決定するもの、
オーディションの指名が来ていて恐らく受ければ役を得られるもの。
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演目の名前、役柄、公演時期、公演場所、演出家の名前が書かれたそれを
ひとつずつ見ながら選んで候補を絞りださないといけない。
ちなみにあらすじが書かれた資料は別途にあって、
それを見比べながら取捨選択していくから、それなりの労働量だ。
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「これ、事務所ちゃんと仕事してんの？」
「結構絞ってそれだよ」
「これからどんくらいまで絞るの」
「５か６？」
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その後にまた半分くらいまでに数を絞って、
第一希望から順に決めていく。
オーディションに受かればその仕事ができるし、
落ちたら別の仕事を受ける、ドラマや映画と少し違うのは、
明確に公演時期と公演場所が決まっていて、それに合わせて稽古をしないといけないということだ。
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翔くんは、ふうん、と気のない返事をして、
一覧になっている紙の束を私に返した後、
今度はあらすじが書かれた資料をぺらぺらと捲り始めた。
一応、機密事項ではあるけど、まあ、他言したりはしないだろう。
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「これとかいいじゃん」
「どれ？」
「これ」
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ひょい、と後ろから文字の羅列を覗き込む。
ちょっとファンタジー要素の強いその話は、
主人公の姉役としてオーディションが受けられる。
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「珍しい…ファンタジーとか好きだっけ？」
「ん？…いや、」
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ぐり、と肩に顎を乗せてふと疑問に思ったことを聞いてみると、
すぐに否定の言葉を出した彼が、資料を目の前のローテーブルに置いて
すぐそこにある顔を私を覗き込むようにして動かした後、口許をふっと上げて言う。
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「これはたぶんキスシーンとかないだろうなあって」
「…」
「俺に優しいミュージカル」
「聞いて損した」
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む、と唇を尖らせて言うと、
はは、と笑った彼が、大事じゃん、と言って目元を緩めた。
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