第43話 ページ3
「……」
オレは、行きと同じ船に乗って、段々と小さくなっていく囹圄島をぼんやりと眺めていた。
結局、オレが探していた情報員の女性は、自らを探偵だと名乗った青年、綾辻行人が言った通りの場所から遺体となって見付かった。
同じく姿を消した他の旅行客達と共に。
『真相を見抜いた事件の犯人を事故死させる能力』。
あんな異能力は初めて見た。
先程の光景がまだ脳裏から離れない。
「極めて悪質な────殺人事件だ」
そう言って綾辻は事件の真相を淡々と語り始めた。
被害者が殺された状況、手段、犯人の目的。
そして最後にあいつは犯人を挙げた。
……その後の事だった。
綾辻が事件を解決した後、三時間足らずの間に犯人が立て続けに死亡したのだ。
十七人全員がそれぞれ、島のあらゆる場所で、全く別の『事故』に巻き込まれて。
凄まじい、としか言い様の無い能力だった。
「……」
あいつ、オレの事も見抜いてたな……。
島を出る前。
事件、そしてその後の一連の話を受けてやって来た政府の人間に身柄を確保された綾辻はオレを呼び止めた。
「町田樹、君の本当の名は何だ。何故偽名を使う?」
「……」
「…………黙りか、まあ良い」
声のトーンを落とし、綾辻は更に言葉を続ける。
「君からは血と暴力の気配がする。だが君の眼はあまりにも澄んでいる……。君は一体…………」
正直、綾辻の観察眼の鋭さに舌を巻いた。
オレは内心の動揺を悟られない事を密かに願いながら、小声で返答する。
「それは言えないかな。…………じゃあね、綾辻サン?」
「………………ああ」
…………殺人探偵、綾辻行人、か。
「……またいつか、名前を聞く日が来るかもな」
オレは、いつの間にか見えなくなった島から視線を外した。
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fiest(フィエスト)(プロフ) - 雨宮さん» お返事遅れましてすみません。雨宮さん、コメントありがとうございます。まだまだ続きますので、もしよろしければ気長にお付き合いください。 (2022年12月25日 23時) (レス) id: ecf63f7120 (このIDを非表示/違反報告)
雨宮 - 面白いです。これからも楽しみにしています。 (2022年11月15日 10時) (レス) @page41 id: 27a6582a0d (このIDを非表示/違反報告)
fiest(フィエスト)(プロフ) - ゆめのさん» ゆめのさん、コメントありがとうございます。大変な亀更新ですがちまちま作っていくつもりですので良ければお付き合いくださると嬉しいです。 (2020年4月25日 21時) (レス) id: 1f83ad1ac9 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめの - コメント失礼します^o^凄く面白いです!更新頑張って下さい!応援しています! (2020年4月17日 19時) (レス) id: a922e9fda4 (このIDを非表示/違反報告)
fiest(フィエスト)(プロフ) - 怪盗MOON さん» MOONさん、再度感想を寄せてくださりありがとうございます。己の好みに従った結果こうなっちゃいました……wちまちま更新してますのでゆっくり待って頂ければ幸いです! (2020年1月6日 0時) (レス) id: 1f83ad1ac9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:fiest(フィエスト) x他1人 | 作成日時:2018年6月5日 18時