雪降るドイツの探偵卿 (ページ41)

今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:11,646 hit

怪盗クイーンの変装？ページ41

「それで＿＿＿少し相談があるのだけれど」

　ちょうどホットチョコレートを飲み終わったところで、ロミルダさんはわたしに再び話しかけてきた。

「なんでしょうか？」

　気分のほぐれたわたしはロミルダさんに、いつもより幾分かリラックスした状態で返事を返した。
　会って間もないけど、ロミルダさんはいい人だと分かっている。好奇心で人を傷付けるような軽率さは持ち合わせていない。

「ユスティンの事なんだけど」

　一瞬、二人がファーストネームで呼び合うような中なのかと勘繰りそうになったけど、彼の姓はデュエッベルス＿＿＿エグモンド・デュエッベルス氏と同じだ。姓で呼んだらどちらのことを言っているのか分からなくなってしまう。
　……ユスティンさんとデュエッベルス氏は、どういう関係なんだろう。姓からして、親子か親戚のどちらかだろうけど。

「彼、今日はなんだかおかしいのよね。話しかけても返事をしなかったり、不自然なほどに目を逸らしたり。もしかしたら怪盗クイーンの変装なんじゃないかと思って」
「えっ！本当ですか」

　わたしから見る限り、ユスティンさんに怪しいところは見受けられなかったのだけれど。しかし、ユスティンさんとロミルダさんは付き合いが長そうだし、わたしの気付かない違和感を覚えてもおかしくない。

「……もちろん証拠はないわよ？でもなんとなく、いつもと違うから」

　そういうロミルダさんは不安そうな表情をして空っぽのマグカップを握り締める。

「知り合いが偽物だった、なんて、気味が悪いじゃない？だから、少し注意して彼のことを見張っていてほしいの」
「＿＿＿分かりました、任せてください」

　ロミルダさんには、笑顔でいてもらいたい。そう思うのはきっと、ロミルダさんとあの人と重ねてるんだと、自覚はしているけど＿＿＿

「探偵卿は、笑顔を守る仕事ですから」

　ロミルダさんは、安心したように笑ってくれた。