雪降るドイツの探偵卿 (ページ32)

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下調べ２ページ32

それを見てムッとしたのか、さらに険しくなったヴォルフさんの顔を隠すように、花菱さんは両手を大きく振りつつロミルダさんとの間に割り込んだ。

「大丈夫ですよ！この人、顔と同じで性格も狂暴ですけど、レディに手を出すなんてことはしませんから！」

　うんうんとうなずくヴォルフさんだったけど、少し考えてまったく褒められていないと分かったようだ。

「おい、お前何言ってんだ！俺のどこが凶暴なんだ！」

　その顔とその台詞とその性格、つまり全てです。そう思ったけど、もちろん口には出さない。
　ロミルダさんは花菱さんの言葉を無理やり信じたようだけど、ヴォルフさんを見る目にまだ恐怖が残っている。
　ユスティンさんはその点プロだ。手に持った資料をわたしに渡してくれる(喧嘩中の２人に渡さないのは適切な判断だと思う)。
　わたしはお礼を言ってから、資料をぱらぱらとめくる。
　まとめると、だいたい次のようなことが書かれていた。

・『アオローラ・グリューエン』の他にも、エグモンド氏のコレクションが１２点公開される
・部屋の中央、黒い台(３０×３０×１１０ｃｍ)の上に置かれる
・他の宝石は、３面それぞれの壁に接してある３つの黒い台(４０×８００×１００ｃｍ)の上に、１６０センチの間隔を持って置かれる
・シャンデリアは、１００Ｗ電球を使い、『アオローラ・グリューエン』を柔らかい光で照らしだす
・美術展自体は２０：００に終わり、そこから警備員が巡回し始める
○ケースは特殊プラスチックで出来ており、厚さ５ｍmと非常に薄いが防弾ガラス並みの強度がある
○ケースは持ち上げると簡単に外れるが、瞬間的にアラームが鳴り、扉が施錠される
○窓ガラスは全面防弾で、割れることはほぼない
○室内の警備は、ＩＣＰＯの探偵卿２名、ドイツ警察３名、学芸員２名、エグモンド・デュエッベルス氏の合計８名で、２１：３０から行われる

　展示室内をざっと見まわす。資料の通りに、宝石がディスプレイされていることが分かった。

「君も警備にあたれるように館長に掛け合っておくよ」

　資料を読み終わりユスティンさんに返した後、秘密めいた小声でそう言ってくれた。