劣化コピー【瀬名泉】

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「どうしよう………」




遊木A、17歳。


現在、迷子です。


どうしよう……


いい歳して迷子とか笑えない。


椚先生に買い出しを頼まれて放課後に少しよっただけなのに。


久しぶりに来てこの辺の地形結構変わってたのは想定外だった。


真くんについて行こうか？と聞かれた時に頷いていればよかった。


過去を後悔しても仕方が無い。


意を決して道を聞くことにする。




「あ、あの………」


「？…はい？」




私が道を聞こうと声をかけると…


見覚えのある黄昏色の髪。


確か…れおくんの妹のルカちゃんだ。


するとルカちゃんはハッとして



「あ！えっと……お兄ちゃんの学校の………Aさん……ですよね…？」




びっくりする。




「私のこと知ってるの？」


「はいっ…お兄ちゃんがよくAさんの話をするので……」




またもやびっくりする。


れおくんが、私の話を？




「つい最近も、ピアノが上手かったとか…それに………」




れおくんが私の話をしていることだけでもう既に混乱しているのだが、ルカちゃんは続けてこう言う。




「私、モデル時代のAさんのファンなんです」




私の…ファン？


衝撃を受けた。


だってルカちゃんは見る限り中学生。


私がモデルだったのはかなり前で、もちろんルカちゃんも幼かったはずだ。


もうモデルの遊木Aなんて世間から忘れられているのに。


中学生のルカちゃんが私のことを知っているのはかなり驚きだ。




「幼かった私にとって、Aさんは憧れのお姉さんって感じで……かっこいいなって…思ってました」




少し…いや、かなり嬉しい。


真くんがやってるからみたいな理由でやっていた私だが、褒められるのは嬉しい。


なにより、遊木真の妹としてのファンではなく、私自身のファンというところだ。


真くんの付属品ではなく私を見てくれる。


そういうのは…久しぶりだった。


どこに行っても”遊木双子””遊木真の妹”。


私自身を見てくれる人はいなかった。


ルカちゃんはキラキラとした目で私を見つめる。


でも、私はそんなにできた人間じゃない。


そんなにキラキラとした目で見られるほど私は偉くない。



『かっこいいなって…思ってました』



私はかっこよくなんてない。


弱虫だ。


どうしようもない。


かっこわるい。


自分の気持ちを言えないお人形と一緒。




「あの、Aさん」


「少しだけ……お話しませんか？」




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