123 / お助けマン ページ31
side S
「……緊張しない？」
「………するに決まってんでしょ、」
翌日の昼前、
ニノとふたり、車の中。
昨夜からずっとざわざわしたまま。
そんな状態で残りのふたりは仕事へ行き、
俺らはお見舞いに来た。
どう接しようか、どんな態度が正しいか。
そう考えてしまうことがまず、間違っているんだけれど。
「……こういうときは、ストレートティーだ」
「は、？」
隣から降ってきた言葉に、つい声が漏れた。
シートに身体を沈ませていた彼がそっと姿勢を正す。
「潤くんに面会謝絶されたときも、それで入れたの」
「……だからストレートティー買って行こうって？」
「他にいい案でもあるの？」
「ないけど…、」
「そこからいつもどおり会話に入るんだよ。…それしか思いつかない」
彼も同じだ。
”正解の態度” を探してる。
ガコン、と
自販機から鈍い音がして、落ちてきたそれを手に取る。
一応、俺らの分も買っておいた。
気を抜かないように、敢えて甘ったるいものを選んだ。
「はーい、」
ノックすれば、いつも通りの呑気な声が聞こえる。
そう、彼はいつも通り。
″いつも通りにしなければ″、なんて
嫌なことを考えているのは俺らだけ。
「おはよ、」
「おはよう、2人は仕事？」
「うん。潤体調は？」
「ん？全然大丈夫」
ふぅ、と2人してひとつ息を吐いてから入れば
普通に交わされる挨拶と会話。
ベッドにも入らずソファで本を読んでいた彼は、
体調はもう全然平気らしい。
「あ、そうだ潤くん、ストレートティー買ってきた」
「わ、ほんと？ありがとう、飲みたかったんだ〜」
「好きだねぇほんと」
ストレートティー出すの早くない？と思ったけれど
提案してくれたニノが言うんだから大丈夫なんだろう。
そう思ってたのに。
潤がストレートティーをひと口飲んだあと訪れたのは、少しの沈黙。
ほら見ろ、早ぇじゃん。
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作者名：ヲ伽
| 作成日時：2022年5月22日 18時
