口癖 -3- (ページ24)

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116 / 知らない者同士ページ24

side N

「続き話す？話さない？」

彼を見つめ続ける俺たちに

平然とそう問う。

色素の薄い瞳。

小さなピアスが光る耳。

片方耳に掛けられた、肩まである髪。

羽織っている薄いココア色のニットストールに添えられた、すらりと細い綺麗な手。

まだ聞いていないのに、

どこか、納得がいく。

「………聞く。でもその前に、伝えたいことがある」

ちらりと3人に目配せすれば、うん、と頷いてくれた。

覚悟を決めたんだろう、3人も。

提案してくれた本人の翔ちゃんが、ひとつ息を吸う。

「本当は、聞く前に伝えてから聞こうと思ってた」

「ん？」

澄んだ瞳で返されると、

少し心苦しい。

「意識的にも無意識的にも、俺らの態度が変わってしまうかもしれない」

「そのとき、潤を傷つけるかもしれない」

はっきり、しっかり伝える翔ちゃんを

潤くんは瞬きもせず、じっと見つめて聞いていた。

伝え終えた翔ちゃんが黙ると、

ゆっくり瞬きをしながら頷く。

綺麗に。

「うん。覚悟はしてる」

「……そうだよね」

「だから話そうよ。価値観や考え方がどう違うか、僕とみんなにどんな違いがあるのか」

” 傷つける ”

俺らが零したその言葉を、そっと拭った。

傷つけるんじゃなく、考えや思いを交換し合おうと。

「みんなが僕のそれを知らないように、僕もみんなのそれを知らないから」

どの国でも、どの人種でも基準になってしまう ”それ” が

彼にはない。

そこに在る価値観や考え方を俺たちが知らないように

ここに在る価値観や考え方を、彼は知らない。

話そう。

きっと、そんなに難しいことじゃない。