108 / 微笑みに隠されたもの ページ16
side O
「………ごめんね、潤くん」
「ふふ、まだ言ってる」
「だって、……ずっと、謝りたかった、」
「うん」
「3人が触れずに居てくれたのに…罪悪感も、後悔も消えなくて」
「うん、」
「記憶、………戻らなかったら、……どうしようって…っ」
涙が引いたから言葉を発したのに
また溢れてきて。
そんな様子のニノに彼は、優しく相槌を打ちながら
涙を拭うように優しく摩り続けてる。
最初の頃のニノに戻ったみたいだ。
”なんで俺が、” って助かったことを嘆いてた。
少しの怪我だけで済んだ自分を心底恨んでた。
ニノまで壊れてしまいそうで、
俺らはずっと、ニノのことも気にかけてた。
「……ニノのこと、守ってくれてありがとう」
俺が零した言葉に、少し驚いた様子の潤に見つめられる。
俺らはニノから、何があったかは聞いてるんだ。
「……仕事のことで、ちょっと言い合いになっちゃったんだよね」
「それで揉めて…、落ちちゃった」
なんとも言えないような表情をした彼からは、
言葉は降ってこない。
でも、どこか
納得した表情で。
「潤くん、」
ずず、と鼻を啜ったニノが、
無理に涙を引かせた顔をして顔を上げる。
呼ばれたほうへ、潤はそっと顔を向けて。
「ごめんね潤くん、……守ってくれて、ありがとう」
数秒、じっとニノを見つめたあと
やわらかく、それはもうやわらかく。
「ううん、ニノが無事でよかった」
そう、微笑んだ。
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作者名：ヲ伽
| 作成日時：2022年5月22日 18時
