乞ウモリ (ページ29)

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beg.28 / 夜が惹き寄せたもの－N ページ29

「じゅーんくん」

「あ、ニノ。おつかれさま」

「おつかれ。病院、ちゃんと行きなよ？」

撮影終わり、廊下を歩く彼に後ろから声をかけると

いつもの笑顔で振り向かれた。

相変わらず輝いてんなー、なんて思ったけれど

ついさっきまで苦しんでたんだから、一応釘を刺しておく。

「ふふ、大丈夫、ちゃんと行くよ」

「送ってこうか？」

「んーん、大丈夫」

「もう、教えてくれたら送るのに」

「ありがと、でも大丈夫だから」

この俺の気遣いは

いつも、優しい笑みで交わされる。

うちはみんな気遣いだからなぁ、なんて納得するけれど

何かあった時のために、病院は知っておきたいんだけどなぁ、とも思う。

「じゃあ俺、行くね？病院閉まっちゃうから」

「あ、うん」

どうしたもんかと考えていると

携帯を弄っていた彼にそう言われて。

頷かざるを得なくて、反射的に頷いてしまい

病院聞けなかった、と後悔が残る。

携帯を開くと、

時刻は19時。

帰ってメシを探すのもめんどくさい。

出前を取って待つのもめんどくさい。

「…たまには1人呑みもアリだな」

せっかくだし、と思って

行きつけの店に連絡を入れた。