beg.22 / 警鐘は攻か守か −A ページ23
会話の内容を教えると
松潤は、テーブルに肘をついて、
項垂れるように、そのまま頭を抱えて。
「……相葉くん」
何か、話してくれると思ったんだ。
俺が正直に話せば、
松潤も、心の中を話してくれると思った。
「……ごめん、それ…忘れて欲しい」
だからこそ
彼から放たれたこの言葉が
しゃぼん玉みたいに浮いては消えていくように
掴めなくて
なかなか、理解出来なかった。
「……いや、…え？ちょっと待ってよ、なんで？」
「……、」
「こんな不可思議なこと、忘れられるわけないでしょ？」
「…お願い。…頼むから…っ」
理解出来なかったのが嘘みたいに、
次々と言葉が出て来て
それを必死になって彼に投げかけると
彼は、頭をテーブルに付けてまで懇願してきた。
その様子に、
俺の違和感は
はち切れそうな程、膨れ上がる。
「……みんなには黙ってる。それでも？」
どうにかしようとそう提案しても
彼はこの提案を呑まなかった。
未だ、頭を上げない彼。
「…じゃあ、聞かない代わりに病院行こう？」
「え…？」
「心配だよ。記憶がすっぽり抜けてるなんて。
あれは確実に松潤だもん。さすがに間違えないよ、俺」
「いや、それは…っ」
焦ったようにフルフルと首を横に振り
また、提案を呑まない。
「どっちかだよ。
どこか悪いかもしれないのに、何も聞かず病院にも行かずに忘れてくれなんて無理」
「…っ、どこも悪くないんだよ。本当に…」
「じゃあなんで記憶抜けてるの？」
「あれは…っ、俺じゃない、から」
今更？
今更、そんな嘘付くの？
そんな、バレバレに焦って。
松潤。
貴方は昔から、嘘が下手なんだよ。
「あれが松潤じゃないなら、笑い飛ばすでしょ？
深夜に外なんて出ない、俺は本当に呼び方なんて気にしない、って」
「……っ、」
「それに、俺が最初に聞いた時の反応が本当でしょ？
あの時、笑って呼び方気にしない、って言ってたじゃん。
何言ってんだ、みたいに答えたでしょ」
彼が嘘を付いていることなんて見え見えだから
正論で論破する。
意地汚いやり方だけど
これで何も言えなくなるの、分かってるから。
ごめんね？
でも俺は、放っておけないんだよ。
おかしすぎるんだ。
いろんなことが。
複雑なパズルじゃないのに
どんなピースも、嵌らないんだ。
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作者名：つむぐ
| 作成日時：2019年3月26日 2時
