乞ウモリ (ページ3)

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beg.2 / 映るのは－A ページ3

ふぅ、と息を吐いて
ソファから立ち上がる松潤は

綺麗な顔に冷や汗が伝っていた。

彼は、幼い頃から心臓が弱い。

…らしい。

ジュニアの頃にそう聞いた。

幼い頃に心臓の病気をして、手術をしたから大事には至らなかったけれど

今でも、時々苦しくなるみたいで。

一度心臓病にかかってしまったら仕方の無いことらしく、彼はいつも専用の薬を持っている。

今みたいに苦しくなれば、いつもそれを体内に流し込んでいるのを見る。

「また苦しくなったら、言いなね？」

心配になって、そう念押しすると
「ん、ありがと」といつもの笑顔で返された。

苦手なんだ。

あの綺麗な顔が、グシャリと歪んで

細くて綺麗な手が、体の中心を強く掴む瞬間。

一瞬で、異世界に放り込まれたみたいに

戸惑ってしまう。

何度も何度も見てるのに

なかなか、慣れない。

…いや、慣れるってのもどうなんだって話だけど。

「相葉くん？行こうよ」

さっきの、彼の苦しそうな表情と

今目の前にある、如何にもみんなの心配を解くためだと言わんばかりの笑顔と

正反対のそのフタツが、
脳裏にこびり付いたみたいに離れなくて。

じっとしたまま動かない俺を不思議に思った彼は、
首を少し傾げてそう言った。

「んぁ、ごめん、行こっか」

彼のその創った笑顔が、
尚更俺を心配させると

彼は、分かっているのだろうか。

いや、分かってるはず。

俺が肺気胸で入院したとき、
『無理に笑わないでいいよ』と言ってくれたのは、紛れもなく彼で。

『落ち込むときは落ち込んで、
泣くときは泣いて。
その方が、俺、安心する』

そう言ってくれたのも、紛れもなく、彼で。

だから、分かってるはずなんだ。

……いや、だからこそ、分からないのかな。

あれは無意識に出た本音で、
いざ自分が言われる立場になると

そう思われてることなんて、分からないものなのかもしれない。

でも、笑顔を創ってしまう気持ちは
その病気のせいで、痛い程分かる。

メンバーには迷惑かけないように、と。

嗚呼、なんていうか、ザ・複雑、って感じだな。