碧棺左馬刻が初めての恋をした話

プリムラ・マラコイデス（４） ページ6

　

　

そして約束の六時になった。



華さんに事情を話すと「左馬刻様とご飯なんて羨ましい！」と言われた。

それ程までに彼は、MAD TRIGGER CREWは人気が高いのだと実感したのと同時に出来れば代わってくださいとも思った。

言えるはずもなかったけど。


　


　
バイトの制服から私服に着替えてお店を出ると、花屋にかなり似合わない白のスポーツタイプのレクサスがすぐに目に入った。

　

　
まさかとは思うけど……………いや、きっとそのまさかだな。






店先で固まっていると、いかついレクサスの窓が開いた。



　
　

「何ボサッとしてやがんだ。早く乗れ」




運転席に座っていたのはやっぱり碧棺さんだった。


急かされるまま私はドアを引いた。







「お、お邪魔しまーす…」


「おう。何か食いてえモンあるか」


「いえ、特には……」


「オイ、遠慮してんじゃねえぞ」


「してませんよ」


「チッ、そうかよ。なら適当に決めんぞ」





　

そう言って碧棺さんは車を出発させた。



音楽もラジオも何も流れない、静かすぎる車内に私は少し拍子抜けした。


勝手なイメージだけどこういういかつい系の人って、洋楽とかガンガン聴いてそうだなって思ってたから。




昼間に会った時に煙草を吸っていたことと置かれている灰皿から喫煙者だということは確認済みだけど、車内には煙草の匂いはこびり付いていない。



むしろメンズ用の香水の匂いがふんわりと香っている。ブルガリ系かな。何となく、一度嗅いだら忘れられないような香りがする。


　

…なんだろう、上手く言えないけど、ヤクザってもっと苛烈な感じだと思ってたけど碧棺さんにはそれだけじゃない、陰がある感じがするなあ……




　

「オイ」


「ハイ！？」

　



なんて思考を巡らせていると声をかけられ、思わず慌てて背筋を伸ばして返事をする。






「無音じゃつまんねぇだろ。自己紹介しろ。俺様はテメェのこと何も知らねえわけだしな」




「わ、分かりました」



　


こくこくと頷くと何から話そうかと考え、やがて口を開いた。


　

　
　

プリムラ・マラコイデス（５）→←プリムラ・マラコイデス（３）

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す