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松川＆矢巾バースデー 12 ページ14
すぅっと徹が息を吸う。
あ、これヤバい。ガチだ。
この距離じゃ、徹の口を塞ぐのが間に合わない。
ハジメがどんなに頑張っても、最初のワンフレーズは口に出てしまうと思う。
それなら……。
「……八＿＿」
「ハッピーバースデートゥーユー♪」
徹の声を遮るように、私が代わりに歌った。
バースデーソングっていったら、1番メジャーなものしか思い浮かばないけど。
この曲は、私の誕生日に毎年徹とハジメが歌ってくれた曲だ。
もちろん、携帯で曲を流してそれに合わせて歌っているから、音程は間違ってない……と思う。
これで私の方が徹より酷かったら、大変申し訳ないけど。
徹の代わりに歌ったことで、徹はもちろん、みんな驚いていた。
ごめんね、徹。
歌い終わったら言おうかと思ったけど、よくよく考えたら徹が予定していないことをしようとするのがいけないんだよね。
よし、謝らなくていっか。
最後のワンフレーズまで歌うと、全員がそれに合わせて拍手をする。
まるで、最初から歌う予定だったかのように。
「……すげえな、若葉」
「お前、歌上手かったんだな」
松川さんと矢巾さんも、何故か拍手をしていた。
今日の主役にまで拍手をされてしまった。
徹が口を尖らせてこっちを見ているけど、知らない知らない……。
見て見ぬふりをして、私はお礼を言ってそのままの勢いで言葉を紡いだ。
「松川さん、矢巾さん、お誕生日おめでとうございます！」
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