700. 2人の救世主 ページ5
左手がジンジンしてきた直後、ヒリヒリとする感覚に変わり、左手自体がじんわりと濡れている。
しかし、そんなことは俺はどうでも良かった。
そんなことを気にしている場合ではなかった。
なんとしてでも、女子生徒を止めなくてはならない。
それがお互いのためだと思った。
「……もう、やめねえか?」
俺が静かにそう切り出すのと、花巻が焦ったように入ってくるのが同じだった。
花「……は?なんだよ、この状況?」
俺たちを見るや否や、素っ頓狂な声を上げる。
無理もない。
大事な試合前に怪我なんて……及川が来たら笑われそうだ。
だから左手で受け止めたっていうのもあるんだけどな。
花「おい、何やってんだよお前!」
花巻が聞いたこともないほどのデカい声で、女子生徒に怒鳴った。
おそらく、俺が握っているカッターと俺にすがり付いて泣くAが見えたからだ。
花巻は自分の鞄をそこに放り投げ、こちらに向かってかけてくる。
すると、今度は松川がひょっこり顔を出した。
いきなり怒鳴り声を上げて走り出した花巻に、驚いているような表情だった。
しかし、俺らを見て状況を理解すると、松川も鞄を投げ捨ててこちらへ走ってきた。
花巻は、女子生徒を俺らから離してカッターを取り上げる。
ようやく俺の手が解放され、その途端ズキズキと鋭い痛みが走った。
松「大丈夫か、岩泉?」
心配そうに尋ねる松川に、俺は「ああ」と頷いた。
傷はそこまで深くなさそうだし、俺は軽傷だった。
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