カルミアは温もりを知らない９

389話 ページ4

『リーブ！』



突然スレナはサンダースの名前を呼ぶ。何か仕掛けてくると身構えた時には既にレパルダスの目の前まで迫っていた。



『あくび！』



緊迫したこの場に見合わない、間抜けな声。
しかし確かにレパルダスはハマってしまっていた。


そのせいであたしは2択を迫られることとなる。
攻めるか、逃げるか、そんな2択。



───普通なら。





「バークアウト！」



接近していたことで今度は逆にサンダースが不利になる。
至近距離で当たったレパルダス本気のバークアウトは、サンダースのお腹にあたり、そのまま壁まで吹き飛ばされた。


壁から地面に落ちたサンダースに審判を乗せたギルガルドが近付く。


すると少しの間動かなかったサンダースが立ち上がり始めた。
ボロボロの身体で、震える足で。


そして再びレパルダスを見据えた時、その目は絶望に変わる。
それからすぐ、力尽きたように倒れた。



「サンダース、戦闘不能！」


〈一度は立ち上がったサンダースでしたが、やはりダメージが大きすぎたのでしょうか。先に勝ち星を上げたのはマリィ選手だァ！眠っているはずのレパルダスもしっかり起きているぞ！
これはスレナ選手にとって厳しい戦いになりそうです！〉



歓声に包まれる中、スレナは臆することなく、地面に横たわるサンダースに声をかけ、ボールに戻す。


落ち込んでいる様子も焦っている様子も無かった。

390話→←388話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す