第55夜 すべてと姫 ページ10
☆
……そのあと、気を失ってしまったようだ。
目が覚めると、私はジュダルの腕で姫抱きされていた。
抵抗しようと腕を伸ばせば、制されてしまう。
「……これは……私が戻るのは、貴方が望んだことですか?」
「ああ、……俺だけじゃねえけど」
ジュダルはそれだけを答えて、すたすたと歩む。
「私はこれから……」
どうなるのですか。
言葉を連ねる前に、彼は言い放った。
「記憶を消される」
「____っ!?」
思わず瞳を見開くと、ジュダルはにやにやと笑っていた。
「記憶を消されてから、シンドリアに行くんだよ」
「何故、そんなことッ……」
「さぁ? ____理由は知らねえよ」
嫌、だ。
記憶を失う恐さを、悲しみを……私はすべてを知っている。
誰よりも、何よりも。
「嫌ですっ……」
「拒否権なんかねえよ、A」
ジュダルをきつく睨むけど、彼は依然笑ったままだった。
どうしようもない気持ちに、心が淀む。
記憶が消えたら、私は何をするのだろう。
ジャーファルに……どんなことを言うだろう。
すべて、忘れてしまったら。
こう考えていることも忘れてしまったら。
全部……消えてしまったら?
「ほら、____ここだ」
扉が思いきり開けられて、暗い部屋に入る。
身体が震えた。
ジュダルの腕からおろされて、……足の力が入らないことに気がついた。
「……しゃーねーな」
肩をかされて、部屋の中央に行かされる。
魔法陣のようなものの中に私だけ。
他は魔導士だろうか。
散らばって私を見ている。
かたかた、恐怖で震えた。
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かな - 面白いです!更新頑張ってくださいね! (2019年5月3日 13時) (レス) id: d01b354714 (このIDを非表示/違反報告)
貴璃(プロフ) - すごくすごくこのお話大好きなんです!どうなるのかなーって思ってたのでよかったです♪ (2016年3月29日 9時) (レス) id: a48d6bf09d (このIDを非表示/違反報告)
樹里 - すっごくおもしろかったです!本当に神作品!夢主が幸せになって本当によかった^^ 新作も頑張ってください!応援しています^^ (2015年6月15日 16時) (レス) id: de9ed35498 (このIDを非表示/違反報告)
バドらび(プロフ) - すっごい面白かったです! (2015年6月14日 20時) (レス) id: 00ee94b664 (このIDを非表示/違反報告)
ティア(プロフ) - 途中まで、夢主が可哀想で、泣きそうでした。・゜・(つД`)・゜・ (2015年6月14日 20時) (レス) id: d1af63575e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:愛衣芽
作成日時:2015年5月16日 7時