牢獄の姫 - second -【マギ】

第54夜　姫の叫び ページ9

「息苦しいだろ？ 白はしんどいぜ」



　


　

　耳元で囁かれる。


　塞いでいる手を掴まれて、ルフの声がいっそう増した。


　だんだん、ルフの壁が迫ってくる。




　


　

「や、……ッ！！」


　


　

　＿＿＿＿ジュダルに思いきり抱きしめられて、動くことができない。


　彼の杖からも黒ルフが出てきた。……当然だろう。




　


　

　瞳が黒に染められる。



　


　

　＿＿＿＿助けてください、……ジャーファル……！



　


　

　……願っても無意味なこと。


　ただ……最後に貴方と話したのはいつだろう。遠い過去のよう……。


　こんなことになるなら……。




　


　


　

「大人しく＿＿＿＿死罪になってればよかった……」
　


　ジュダルが、にやりと笑った……気がした。



　ルフの声は依然やまない。おかしくなりそうだ。



　だけど、抱きしめられた今、身動きが出来ない。




　

　代わりに、ポロポロと言葉が溢れた。




　


　


　

「辛(つら)いことを……思い出すなら。いっそあそこで……」
　


　＿＿＿＿シンドリアで。





　


　

「死んだ方がよかった＿＿＿＿！」


　ザアアッと、辺りに風が吹く。

　黒ルフが嬉しそうに鳴いた。








　


　
　……待っ、て……。もしかして、私、



　


　

　震える私を余所に、ジュダルがまた囁いた。



　


　

「……黒へようこそ。


　


　


　


　


　いや＿＿おかえり、A」

「＿＿＿＿っ！！」
　



　
　瞳から涙が溢れ出す。黒ルフが散乱して行く。


　完全にその壁が消えて、紅炎の笑顔が見えた。




　


　


　



　



　


　


　


　


　

　

　


　
「いやああああああああああぁぁッ！！！」



　

　私の悲鳴が、ルフの声と共に響いた。


　

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