平野くんを本気にさせるには。 (ページ5)

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「んで、Aは何しに来たの？」

寝ている身体を横にして私のほうを向いてくれた。

何しに来たの？なんて、聞かなくてもわかってるくせに。

「平野くんに会いに来た」

「……ストレートだね」

だってほんとのことだから。

平野くんに会いたくて、私は毎日放課後の保険膣に来ている。

「平野くん、今日授業出てなくて会えなかったから」

「……そんなに俺に会いたかった？」

「うん」

せっかく同じクラスで、6時間目まで授業あったのに。

平野くんは1時間も授業に出てこないんだもん。

「Aは素直だね」

「平野くんの前だけ」

「……俺だけ特別ってこと？」

「そ……だよ」

「へー、嬉しいね」

嘘つき……ほんとはそんなこと思ってないくせに。

平野くんはうそをつくのがうまい。

いつも表情からは、何も読み取れない。

「平野くんだけ特別だもん……」

「うん、嬉しい」

どんなに素直に言ったって伝わらない。

私の気持ちと平野くんの気持ちが交わることは、絶対ないんだ。

「ね……Aこっちおいでよ」

「っ……いや」

「……なんで？俺に会いたかったんじゃないの？」

会いたかったよ……。

けど、今の平野くんには近づきたくない。

だってさっきまで別の女の子とそういうことしてたじゃん……。

それに近づいたらまた少し、平野くんを好きになる……。

なんて、きれいごとみたいなこと言ってるけど。

私ってほんと、何考えてるんだろう、

会いたくて来てるくせに、近づくと好きって気持ちを抑えられなくなるから近づかない。

完全に矛盾してる……。