平野くんを本気にさせるには。 (ページ4)

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数十分すると、ガラッと保健室の扉が開いた。

「んー、すっごーくよかったぁ。じゃあまたね紫耀♪」

さっき平野くんの名前を呼んでいた女の子が、制服のリボンをつけながらそう言って出てきた。

……また違う女の子。

しかも、すっごく美人でスタイルもいい。

保健室にいる平野くんに会いに来ると、いつも決まって違う女の子がいる。

完全に女の子がいなくなってから、私は再び保健室に足を踏み入れる。

そして、さっきのベッドに近づいて、閉まっているカーテンを開けた。

「平野くん」

私が会いたくて会いたくて仕方なかった人の名前を呼ぶ。

はだけた制服を直すこともせず、スゥスゥと眠る。

そんな姿にいつもドキッとするんだ。

「……」

「ねぇ、平野くん。起きてるんでしょ？」

いつも私が来ると寝たふりばっか。

「平野くーん」

さらにベッドに近づいて、眠っている平野くんの顔の近くで呼んでみる。

「……ん。起きてるよ」

ほらね。

「起きてるならすぐ返事してくれればいいのに」

「Aが顔近づけて名前呼んでくれるの……なんか好き」

気だるげな表情で私を見つめる、この瞳が好き。

「意味わかんないよ」

「バカなの？」

フッと笑ったこの笑みも好き。

「ねぇ、平野くん」

「……なに？」

「……なんでもない」

「なにそれ」

これもいつもの会話。

ほんとは聞きたいこと、たくさんあるんだよ。

さっきのあの子、誰？とか、彼女なの？とか、どうしていつも違う女の子といるの？とか……。

今までずっと、聞きたくても聞けないでいる。

だって……きっと聞いたら平野くんは嫌がるから。

これはなんとなく私の直感。

それに私と平野くんは、ただのクラスメイト。

彼女でもない私にそんなこと聞かれても、鬱陶しいって思うだろうし……平野くんは面倒なことを嫌うから。