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「すみません」
そんなやり取りが終わるのを待っていたかのように、控えめな声が空気を揺らす。
A、ではない。
彼女よりもいくらか低くて、それでいてあどけなさの残った、穏やかな声。
だが、その声に気づいた生徒は、ほんの数人しかいなかったし、聞こえた生徒も、声の主が見当たらないものだから、空耳として片付けてしまった。
黄瀬涼太を含む、三人を除いては。
声の主に思い当たって、黄瀬は殆ど反射的に立ち上がりかけ、そして気力で踏みとどまった。
半端に動いた椅子の脚に蹴立てられて、タイル張りの床が耳障りに鳴る。
「……黄瀬くん?」
和泉の心配そうな様子を肌で感じ取るが、あいにく今の黄瀬にそれに応える余裕は無かった。
ぐるりを見渡せば、教室中の誰もかれもが、自分を見つめている。
仕事上、見られることには慣れているが、軽くホラーだな、この状況。
あはは、と笑いで失態を誤魔化しつつ、黄瀬は横目で窓際の席を確認した。
「どうした黄瀬、具合でも悪いのか」
「いやぁ、そうじゃないんスけど……」
どうして今まで気づかなかったのだろう。
窓際の列だけ、一つ机の数が多かったことに。
プリントの白紙申告や、とぼけた自己紹介。
それ以前に、まず居るだけで異質なサルの存在感に霞んでしまったけれど、先ほどの声の主の席は、Aの後ろに、ぽつねんと存在していた。
ただ、誰も気づいていないから、Aがその列の最後尾と勘違いされていただけだ。
さっき高尾がすぐ自己紹介に移らなかったのも、彼とAが後ろを振り向いた理由にも、納得がいった。
あれだけ近い位置に座っている二人だけは、自分の後ろに人がいるとわかっていたのだ。
席の数と、ついでに周囲の視線を釘づけにしていることを再認識した上で、聞かれてもいないセリフを続ける。
「ちょっと、自己紹介の順番抜かしてるなーって教えようとしたら、足、滑っちゃって」
飛び切りの笑顔を浮かべてみれば、教室のどこかで誰かが息を呑む音が聞こえた。たぶん女子だろう。
その笑顔を今度は例の席に向けて、黄瀬は明るく言い放った。
「なんか出番取っちゃったみたいでごめんね、黒子っち!」
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心音(プロフ) - 感動の一言です。面白さもあるなかでの、作品の静かな雰囲気が本当に素晴らしいと感じました!更新、楽しみにしてます! (2015年6月28日 9時) (レス) id: da51ec7942 (このIDを非表示/違反報告)
www - でもが2回も続いてしまいました(汗すみません… (2014年12月26日 15時) (レス) id: 923386029d (このIDを非表示/違反報告)
www - ひぢのさん» そうですよね!あ、でも作品ほとんど消えてしまってて…。せめて残して欲しかったって言うのは私の我儘ですかね…。でも、その人がいるサイト分かったので行きます。ひぢのさんの小説もちゃんと読みます(ニコッ頑張って下さい!ランキングとかに乗るといいですね (2014年12月26日 15時) (レス) id: 923386029d (このIDを非表示/違反報告)
ひぢの(プロフ) - wwwさん» 作品を書くのがお好きな方でしたし、ガッツもありましたから、きっと裏切り云々の規約のない新天地で返り咲いてくれることでしょう。占ツク時代の作品のタイトルなどを頼りに、探してみることをお勧めいたします。 (2014年12月26日 15時) (レス) id: e3c5154d5f (このIDを非表示/違反報告)
www - 裏、切りの小説が少しでも減って皆で楽しめるようになるといいですね! (2014年12月26日 15時) (レス) id: 923386029d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひぢの | 作成日時:2014年12月25日 5時