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この学校の生徒には、階級が存在する。
階級は遺伝によって決まり、一生変わることはない。
そのため、待遇の改善を望む下流階級の生徒は、上流階級の生徒とお近づきになって、積極的にその庇護下に入ろうとした。
中等部時代、最高階級である『キセキの世代』の恋人の座を巡り、幾度と無く小競り合いがあったことを、和泉はハッキリと覚えている。
それも黒子がいた間は落ち着いていたが、彼が学校に来なくなってからは、再びギスギスした空気に戻り始めていた。
そして、高等部から入ってきた生徒の大半は、内部進学してきた生徒より、家格も階級も劣る者たちだ。
故に『キセキ』を求める思いは、中等部の生徒よりも強い。
争いの激化は、目に見えている。
(いじめとか、起きないといいんだけど……)
講堂の壇上で新入生代表の挨拶をする赤司を見つめながら、早くも和泉は学園生活に不安を抱いていた。
和泉自身はキセキと親交もある上、赤司がついているため、特に心配はない。
だが、全く後ろ盾のない生徒だって存在する。
和泉はそっと赤司から視線を外し、斜め前に座る女子生徒の様子を伺う。
驚くことに、式が始まって以来、女子生徒の美しい姿勢は一向に崩れる気配を見せなかった。
注意散漫になったり、浮き足立っている生徒の中で、周囲に緊張の糸を張って、ただ静かに息をしている。
それだけなのに、彼女はキセキに勝るとも劣らない数の視線を集めていた。
好奇と侮蔑、憐憫が多分に含まれている、数え切れない針のような視線。
キセキに向けられるものとは逆の、決して歓迎されるべきではない代物。
「ねえ、あの子、サルだよね」
和泉の耳は、そんな囁き声を拾った。
『サル』。最下級より更に下の、まず階級の存在すら知らない人間を指す蔑称だ。
本来なら、帝光に入学することを許されない人種。
世界の総人口の七割を占める『猿人』のことを、格下に見る人間は『サル』と呼ぶ。
『猿人』は自分たちがサルということにも、階級の存在にも気付くことはない。脳が猿人以外の人類に関わる情報を、勝手にシャットアウトしてしまうから。
向けられる罵声と悪意。
彼女の背中は小揺るぎもせず、沈黙で以てそれらを捻じ伏せている。
僅かに見えた彼女の瞳が、和泉には少し瞬いたように思えた。
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心音(プロフ) - 感動の一言です。面白さもあるなかでの、作品の静かな雰囲気が本当に素晴らしいと感じました!更新、楽しみにしてます! (2015年6月28日 9時) (レス) id: da51ec7942 (このIDを非表示/違反報告)
www - でもが2回も続いてしまいました(汗すみません… (2014年12月26日 15時) (レス) id: 923386029d (このIDを非表示/違反報告)
www - ひぢのさん» そうですよね!あ、でも作品ほとんど消えてしまってて…。せめて残して欲しかったって言うのは私の我儘ですかね…。でも、その人がいるサイト分かったので行きます。ひぢのさんの小説もちゃんと読みます(ニコッ頑張って下さい!ランキングとかに乗るといいですね (2014年12月26日 15時) (レス) id: 923386029d (このIDを非表示/違反報告)
ひぢの(プロフ) - wwwさん» 作品を書くのがお好きな方でしたし、ガッツもありましたから、きっと裏切り云々の規約のない新天地で返り咲いてくれることでしょう。占ツク時代の作品のタイトルなどを頼りに、探してみることをお勧めいたします。 (2014年12月26日 15時) (レス) id: e3c5154d5f (このIDを非表示/違反報告)
www - 裏、切りの小説が少しでも減って皆で楽しめるようになるといいですね! (2014年12月26日 15時) (レス) id: 923386029d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひぢの | 作成日時:2014年12月25日 5時