13 ページ25
緋那はというと、一歩引いた位置からその様子を眺めていた。
「あ、そうそう、緋那ちゃんって入る部活、もう決めてんの?」
……訂正、高尾に絡まれていた。
「緋那ちゃんってスポーツ万能だからね、運動部から引っ張りだこなんだよー!」
そして、何故か桃井が自慢げに割って入る。
横で盛り上がる二人を後目に、もうお前らだけで喋っててくれと緋那はうんざりした。
もともとこういう場は好きではない性質だし、なにより高尾のようなタイプは緋那の最も苦手とするところだった。
大人数で群れたり、強い立場の人間にすり寄ったりするような奴は、一番嫌いだ。
一人じゃ何もできませんと公言しているような、甘ったれた人間とは一緒にいたくない。
誰かに頼って何とかしようとする奴に、ただ黙って使われるなんて、緋那は我慢ならなかった。
そして緋那の目には、高尾が「そんな奴」に映っていた。
緑間の世話役だか知らないが、上手く取り入ったもんだと思う。
情報だけは腐るほどあるのに、どうして桃井も気づかないのだろう。
やっぱり、赤司以外のキセキは、全員どこかバカなのかもしれない。
でも俺は騙されたりしない。
いったん決意してしまえば、もう真面目に話す気も起きなくて、高尾のお世辞と質問を、適当に流す。
顔も見たくなくて人混みに目を逸らせば、視界の端を、淡い空色が掠めた。
覚えのある色だ。
まさか、と細心の注意を払って、周囲を眺めまわした。
どこも見落とさないように神経を尖らせて探せば、いた。
しかし、すぐに建物の陰へと隠れてしまう。
「……嘘だろ」
低く発せられたその言葉は、緋那が発したものではなかった。
声の主は、高尾だ。
空色が消えた方を注視していた彼は、緋那の視線に気づいたのか、首だけをめぐらせて、彼女を見た。
あの軽薄そうな笑みが、まるで拭い去られたように消えている。
怯えているような、歓喜を爆発させる一歩手前のような、とにかくただ事ではない表情をしていた。
6人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
心音(プロフ) - 感動の一言です。面白さもあるなかでの、作品の静かな雰囲気が本当に素晴らしいと感じました!更新、楽しみにしてます! (2015年6月28日 9時) (レス) id: da51ec7942 (このIDを非表示/違反報告)
www - でもが2回も続いてしまいました(汗すみません… (2014年12月26日 15時) (レス) id: 923386029d (このIDを非表示/違反報告)
www - ひぢのさん» そうですよね!あ、でも作品ほとんど消えてしまってて…。せめて残して欲しかったって言うのは私の我儘ですかね…。でも、その人がいるサイト分かったので行きます。ひぢのさんの小説もちゃんと読みます(ニコッ頑張って下さい!ランキングとかに乗るといいですね (2014年12月26日 15時) (レス) id: 923386029d (このIDを非表示/違反報告)
ひぢの(プロフ) - wwwさん» 作品を書くのがお好きな方でしたし、ガッツもありましたから、きっと裏切り云々の規約のない新天地で返り咲いてくれることでしょう。占ツク時代の作品のタイトルなどを頼りに、探してみることをお勧めいたします。 (2014年12月26日 15時) (レス) id: e3c5154d5f (このIDを非表示/違反報告)
www - 裏、切りの小説が少しでも減って皆で楽しめるようになるといいですね! (2014年12月26日 15時) (レス) id: 923386029d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ひぢの | 作成日時:2014年12月25日 5時