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あれは、どういう意味だったんだろう。
抜け道を走りながら、和泉は先刻のウサギくん(仮)の言葉の意味を考えた。
後で本人に聞こうと思い立って、彼の本名を知らないことに気付く。
だけど、ブレザーを着ていたし、寮区にいたのなら、ほぼ学校の関係者であることは疑いようがない。
あの髪と瞳の色も目立ちそうではあるから、入学してから探そう、という結論に和泉が至ったのとほぼ同時に、抜け道が終わった。
どこかに出たのか、と理解するもつかの間。
開けた視界に、ぶわり、桜色が迫る。
圧倒されて、思わず和泉は足を止めた。
瀟洒な石畳の道の両脇に、桜並木が続いている。
大通りに出たようだ。
ここまで来れば、もう迷うことはない。
肩で息をしていたものの、和泉は少しほっとして、周囲を見回した。
大通りの突き当りにある、あの城のような建物が学園だ。
校門の向こうに人だかりを見つけて、あそこが待ち合わせ場所だね、と和泉は再確認する。
見える位置にあるんだし、急がなくちゃ。
幸いなことに、百メートルほどの距離を走る体力なら、ギリギリ残っている。
「……何、あの子」
待ち合わせ場所まで駆け出した和泉を見送って、一人の少女が呟いた。
ぱりっとしたグレーのカッターシャツの首元を、小豆色のネクタイできりりと締めている。
「どうかしたんですか、Aさん」
背後から声をかけられて、Aと呼ばれた少女は肩を跳ねさせる。
振り向くと、空色の髪と瞳をした少年が、そこに立っていた。
「いや、ちょっと……ネクタイの色が選べたらなーって思っただけ」
はぐらかす少女の言葉に、少年は僅かに俯く。
彼のネクタイも、Aの着けているものと同じ色をしていた。
「……そうですね」
少女の豊かな黒髪が、春風になびく。
「ボクもそう思います」
彼らの頭上には、春とは思えないほど澄んだ、青い空が広がっていた。
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心音(プロフ) - 感動の一言です。面白さもあるなかでの、作品の静かな雰囲気が本当に素晴らしいと感じました!更新、楽しみにしてます! (2015年6月28日 9時) (レス) id: da51ec7942 (このIDを非表示/違反報告)
www - でもが2回も続いてしまいました(汗すみません… (2014年12月26日 15時) (レス) id: 923386029d (このIDを非表示/違反報告)
www - ひぢのさん» そうですよね!あ、でも作品ほとんど消えてしまってて…。せめて残して欲しかったって言うのは私の我儘ですかね…。でも、その人がいるサイト分かったので行きます。ひぢのさんの小説もちゃんと読みます(ニコッ頑張って下さい!ランキングとかに乗るといいですね (2014年12月26日 15時) (レス) id: 923386029d (このIDを非表示/違反報告)
ひぢの(プロフ) - wwwさん» 作品を書くのがお好きな方でしたし、ガッツもありましたから、きっと裏切り云々の規約のない新天地で返り咲いてくれることでしょう。占ツク時代の作品のタイトルなどを頼りに、探してみることをお勧めいたします。 (2014年12月26日 15時) (レス) id: e3c5154d5f (このIDを非表示/違反報告)
www - 裏、切りの小説が少しでも減って皆で楽しめるようになるといいですね! (2014年12月26日 15時) (レス) id: 923386029d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひぢの | 作成日時:2014年12月25日 5時