朝食の誘い(1) ページ14
代表選手の選考と発表を終え、早くも日本代表イナズマイレブンは練習合宿を開始していた。
マネージャーたちと朝食の支度を整えながら、二階、台所の天井を見上げる。まだ選手たちは眠っているのだろうか。真面目な選手はすでに起きているかもしれない。
早速合宿が始まったものの、選手たちとはまともに顔を合わせていない。自己紹介の時も、逃げるように端で縮こまっていただけだし、選考試合の時も久遠親子の隣にいて作業をしていた。選手発表はAを交えた選考会を挟み、選考試合の翌日に行われた。一応監督の隣に控えてはいたのだが、特に選手の誰かと会話を交わすこともなく終わった。まだ、互いに緊張が抜けないのだろう。
Aは出来上がった食事を皿に盛り付けながら、3人のマネージャーをちらりと盗み見た。 かなしいかな、今この瞬間までまともな会話をしていない。3人は3人で、それなりに砕けた会話をちょこちょこしているのだが、Aは無言で作業をこなすだけだった。
おそらく、Aが彼女たちよりも歳上であることも災いしている。「冬花だけなら、一対一なら、大丈夫だったんだ」と、Aは何度も心の中で言い訳をした。
「盛り付け、終わったから。運んでいくね」
「あ、はい！ありがとうございます、永久さん」
自分から話しかける勇気が無い。相手が歳下だろうとなんだろうと、いつでも人見知りは発揮される。さらに自分の立場が立場であるために、どう接すればいいのかもわからなかった。
結果、Aと彼女たちの間に流れる空気は、とてもぎこちないもので、常に緊張が揺れていた。その空気を生み出してしまった原因が、主にA自身の極度の緊張からくるものだと自覚しているからこそ、余計にAは居た堪れなくなり、通常から少なめな口数が激減した。
先程から冬花は様子をうかがうようにAに視線をちらちらと向けるが、それに応えられる余裕がAには無かった。頭を抱えて落ち込んでいる心はなんとか表立つことはなかったが、その代わりうっすらと眉間に皺が寄せられる。空気の緊張は途切れない。悪循環。誰でもいいから早く起きてこの空気をぶち壊してくれ、と切に願った。
「あ、お兄ちゃん！おはよう！」
「あぁ、おはよう」
よ り に よ っ て お ま え か。
＿＿＿＿＿＿＿
お久しぶりです。
単位と戦ってました。
しかしまだ戦闘中です。
死にそう
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作者名：榛 | 作成日時：2016年7月11日 0時
