一番上の姉【ヒプマイ】

同僚　２ ページ17

けど、俺たちと違ったのはリーマンがいたことだ。


それが姉にとってささやかな支えだったんだろう。


仲間がいるといないとでは、溢れる感情も変わってくる。



「今回、Aさんがあんなことをする原因の…ストレス過剰は多分、俺のせいだと思うんです…」


『…なんでそう思う？』


「バトル優勝後、会社での知名度とか社員の視線が一気に変わってみんな俺と関わろうとして俺の仕事まで彼女に押し付けて飲みに誘ってきて…。俺、あの時無理にでも断ってAさんの仕事手伝ってたらって今でも後悔してて…」


『そうか…。けど、あんま気にすんな。アイツは多分、そんなこと気にしてねぇ…』


「あの…ずっと気になってたんですけど、左馬刻さんって、Aさんのこと、いつも“アイツ”って呼んでるんですか？」



言われて、初めて気づいた。


俺は一度も姉を人前で“姉”と呼んだことがない。


別に嫌なわけじゃない。


イヤ、イヤな時もあったが、今は嫌じゃない。


逆に呼びたいと思っているほどなのに、何故か口から“姉さん”という単語が出てこない。


出るのは煙草の煙だけだ。



『…気にしてなかった。俺は、昔からアイツのことが嫌いだったからよォ…』


「嗚呼…だから、Aさん、「家に帰っても居場所がない」って…」


『その元凶は俺と妹だ…。いなくなって初めて、知ろうとしてるなんて惨めな話だよな』


「い、いえ…そんなことはないです…。それにAさん、左馬刻さんのこと心配してましたし…」


『は？』


「俺が、弟の話をした時なんですけど…

「私にも一つ下の弟がいるんです。とっても危なっかしくて、怪我して帰ってくる時もあるんですけど、家族のために頑張って…自慢の弟なんです。たまに、肝が冷える時もあるんですけどね…」

って、嬉しそうに話してましたから」

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