運命の糸は知っている[上杉和典]Season２

６０紡ぎ目 ページ10

美｢亡くしたって...どういうこと？｣



入口の方から、美門の声が聞こえた。

私はそっちを見て、目を伏せながら答える。



貴『みんなには言って無かったけど、私にはもう一人、幼なじみがいたの。

　 村上麻衣っていう、同い年の子でね。


　 私が８歳のとき、車に轢かれそうになったところを庇って亡くなったの。

　 血飛沫が辺り一面に飛び散り、鉄の匂いがした。

　 足がすくんで、周りから聞こえる悲鳴もだんだん小さくなって...』



ただただ怖かった。

認めたく無かった。


だからこそ、綾美お母さんが亡くなったって聞いたとき、信じられなかった。

美恋とお父さんがいなくなったとき、一人でいるのが怖かった。



忠｢滅多に泣かなかったAが、あの時初めて泣いた。

　それは、悠飛くんもよく覚えているね｣


片｢...はい｣



お父さんは、私に向き直る。


忠｢『私のせいで、みんな傷付く』...人一倍責任を感じやすいAならそう思っただろう。

　だが、それは大きな間違いだ。私が、お前の周りから大切なものを全て奪ったんだ。


　家族も、友人も、幸せも...｣


貴『...お父さん、それは間違ってる』



じっとお父さんの目を見ながらそう切り出す。



貴『確かに、お母さんたちは死んだ。でも、お父さんと美恋は生きてる。

　 友達だってそう。麻衣はもういないけど、KZのみんながいる。


　 私は、それだけで充分幸せなの』


忠｢...こんな私も、まだ父親だと思ってくれるんだな｣


貴『当たり前でしょ。どれだけ酷いことをしようと、家族は家族なんだから』


忠｢....！




　...七鬼くん。この呪縛は、君の力をもってすれば簡単に解除出来るだろう。

　私はすぐにでも自首しなければならない。お願いできるね、KZのみんな｣



立ち上がってみんなを見たお父さんに、全員が頷いた。


部屋を出て行ったあと、七鬼が美恋の額に手を翳し、目をつむる。

少しすると、美恋が目を開いた。



貴『美恋....！！』


天｢ぅん...お姉ちゃん...？...お姉ちゃんっ！！！｣



お父さんから貰った鍵で手錠を外すと、美恋が飛びついてきた。



天｢会いたかったっ...会いたかったよぉ...！｣


貴『よかった...貴方が無事でっ...！』



ギュウッと抱き着く美恋に、私も抱きしめ返す。



上｢天海夜、美恋の手当もしないといけねーから、早く戻るぞ｣


貴『えぇ』

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