"通称"愛されマネージャーの日常second【番外編】

幼児化 ページ39

『ねぇ、聞いてる？』



私がそう問い掛けても、一也は呆然と私の目の前に突っ立っていた。

まぁ、そうなるのも無理はないかもしれないが。


そう思いながら返答を待っていると、一也が一言。



「...スゲー可愛い」


『今その言葉求めてないんだけど』



一也の言葉に溜息をつきながら、私は随分と小さくなった自分の身体を見下ろした。


本当に突然だった。

前日に何か前触れがあるわけでもなく、朝起きてみたら身体が縮んでいたのだ。

それで一也に連絡して来てもらったところ、冒頭に至る。



『前は猫耳と尻尾が生えたし...そろそろ自分の身体が心配になるわ』



小さくなった手を握ったり開いたりしてみる。

推定四歳児の身体になってしまった今、握れるものも制限されてしまう。

この手ではボールを運ぶのもままならないだろう。


まぁ、幼児化したのは身体だけのようなので、記憶が消えるよりはマシだ。



「それで？今日の練習はどうするんだよ」


『見てるだけになるでしょうね。早く走ることも出来ないし。

　取り合えず、監督達に報告しないと』



そう言ってベットから降りようとしたのだが...床に足がつかない。

それを見た一也が吹き出したので、私はジロリと一也を睨み上げた。



『...何』


「今のAに睨まれても全く怖くねーな。沢村でも言うこと聞かなさそうだ」


『どういう意味よ、それ』



一也の言葉にムッとしながらも、そっとベットから降りる。

ベットを高いと感じたのは初めてかもしれない。


ベットから降り、外に出て、また一つ問題が起きる。

私の部屋は二階。つまり階段があるのだ。



「降りれるか？」



あからさまにニヤニヤしながら聞いてくる一也に『うるさい』と返し、

手摺りを握って一段一段ゆっくりと下りていく。



『...不便過ぎる』


「仕方ねぇな、っと」


『え、あ...！』



スタスタと下りられないもどかしさに眉を寄せると、

数段先に下りていた一也が戻ってきて、私の身体を軽々と持ち上げた。

まるで小さい子がされるような抱かれ方に、私はすぐ抗議の声を上げる。



『ちょっと、降ろして』


「だめ。こっちの方が速いだろ？」



ニッと笑った一也の顔が目の前にあって、私は思わず顔を逸らした。

それと同時に、治るまではずっとこんな不便な状態が続くという現実に、

私は憂鬱な溜息をついた。

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