"通称"愛されマネージャーの日常second【番外編】

猫耳 ページ37

いつも通りの平日の、いつも通りの朝。

何の前触れもなく事件は起きた。



『...何これ』



朝起きて寝癖を直そうと鏡を見ると、

もふもふの三角形が私の頭に乗っていた。

いや、"生えていた"の方が正しい。


どう考えても、猫耳。


...何だろう、このアニメでよくあるシチュエーションは。

こういうのは、大抵誰かに見られる気が...。



「Aー？起きてるかー？」


『っ！？』



ドアの向こうから聞こえた一也の声。

耳が四つあるからか、その声がいつもの倍以上大きく聞こえて、

思わず肩が跳ねた。


私が肩を跳ねさせるとの、部屋のドアが開くのは同時で。

「なぁ、ちょっと朝練付き合って、くれ...」と、

私の姿を捉えた一也の言葉が、徐々に空気に溶けていく。



「......超可愛い」


『殴っていい？』



驚くよりまずそこかと、本気で目の前の奴を殴りたくなった。




「...で、いつの間にか生えていたと」


『ん...』



頭からタオルを被り、一也に気付いた時の事を話す。

耳だけでなく、何なら尻尾も生えてきているのだが。



「んー...まぁ、可愛いしいいだろ」


『よくないわよ。今日一日このままだったら、学校と部活どうする気？』


「つっても、原因が分からないんじゃどうしようもないだろ？」



圧倒的正論に、私はグッと押し黙る。

確かに、こんなの医者に診てもらっても原因など分からないだろう。



「てか、その耳と尻尾って感覚あるのか？」


『一応は。触ったら少しくすぐったいけど』


「へぇ...？」



...しくじった。

怪しく笑った一也を見て、直感的にそう思う。



『...触らせないわよ』


「じゃあ、無理矢理しかないな」


『は？て、ちょっ...！！』



危機を感じてギュッとタオルを掴むも虚しく、

伸ばされた一也の手によってあっさりと猫耳があらわになる。


一也の指が耳に触れると、身体が勝手にピクッと震えた。



『あ、ぅ...やめっ...んっ...！』


「おぉ、すげーもふもふ」


『ば、ばかっ！ちょ、ふにゃあっ...』



変な声が出てしまって咄嗟に口を塞ぐが、もう遅い。

笑みを深めた一也の手は、尻尾にまで伸びてきた。

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